論文

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2017年12月

景観活用型映画祭の実践的意義

県立広島大学経営情報学部論集
  • 矢澤 利弘

10
1
開始ページ
85
終了ページ
100
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(大学,研究機関等紀要)

ここ数年、日本各地で映画の野外上映会が多く開かれている。近年では、映画を野外で上映するだけではなく、映画祭の開催地域に固有の自然や風土を活用して映画を上映する形式の映画祭(景観活用型映画祭)も生まれている。
本論文は複数の景観活用型映画祭を実地調査することによって、景観活用型映画祭の現状を把握し、それらの特徴と景観活用型映画祭が観客や地域に対してどのような意義を有しているのかについて考察する。本研究では、いくつかの景観活用型映画祭の事例を比較検討することによって、一定のインプリケーションを導出することを目的としている。そのために、本研究では、長野県飯山市の「みゆき野映画祭in斑尾」、広島県尾道市の「瀬戸田映画祭」、兵庫県洲本市の「うみぞら映画祭」という3つの景観活用型映画祭を実地調査した。
複数の景観活用型映画祭を比較分析した結果、本論文では以下の特徴と意義を指摘している。まず、それぞれの映画祭の開催地域がそもそも別の観光資源を有しているため、景観活用型映画祭は、過疎地で地域活性化や観光振興を期待して行われる地域映画祭とは若干異なっているという点を指摘しうる。二つ目は、景観活用型映画祭は、質は高いが、一般に興行価値が高いとは言えない映画を観客に伝えるための装置となっているという点があげられる。三つめは、景観活用型映画祭においては、観客が純粋に映画を鑑賞するという行為だけではなく、映画制作という側面を重視するという傾向があるということがあげられる。このように、景観活用型映画祭という「場」は、映画をより限界芸術に近いものへと変貌させ、地域にとっては地域ブランドの形成などに寄与し、観客にとっては映画鑑賞の敷居を低くするという意義などを有するといえる。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/120006369764 本文へのリンクあり
共同研究・競争的資金等の研究課題
映画祭の統合的マネジメントモデルに関する実証研究
ID情報
  • ISSN : 1882-7985
  • CiNii Articles ID : 120006369764

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