共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2024年3月

越境する労働市場の形成ーアジアにおける人材業者の役割についての経済社会学的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K02111
体系的課題番号
JP19K02111
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,340,000円
(直接経費)
1,800,000円
(間接経費)
540,000円

まず一年目の課題は、日本ベースの人材業者の活動を、その歴史を含め現況を調査し、人材業者の活動が活発な領域における直接投資や人の移動の動向について、確認作業を行うことであった。その結果、日本ベースの人材業者は、日本企業の海外進出の波に乗る形でアジア各国に展開していることが確認できた。近年最も影響が大きかったのは東日本大震災で、震災によってサプライチェーンの災害脆弱性が露となった製造業で、大企業のみならず、中小まで含めたサプライチェーン全体で海外展開する必要に迫られていた。人材業者はこの流れに乗る形でアジアへの(再)進出を果たしていた。
そこでの活動は、言語をベースとした日本文化への適応によって労働者の選別・能力開発を行うなどの特徴があり、独自の労働市場を構築している可能性が指摘できた。ベトナムなどにおいて、日本語専攻学生を囲い込み技術を教えると同時に、日本企業の職場文化を習得させるなどのプログラムが開発されていた。こうした囲い込みと教育は、人材業者にとってはその営業力の強化であると同時に、労働市場の形成という意味では、そこで流通する労働力に期待される能力定義を模索、制度化する過程でもあると言える。
ここまでの成果について、昨年度、上智大学社会学論集に英語論文として発表した。
二年目・三年目はコロナ禍で実際の調査が停滞せざるを得ず、上記に加え、アジアにおける労働移動規範の広がりを明確にするプロジェクトを考えてきた。労働移動に係るILO条約の国ごとの批准状況をデータベース化し、国家間の規範の濃淡をマッピングする方法を模索している。人の移動に係る要素は、思いのほか多岐にわたる条文の中に見出すことができ、それぞれの条文の成立背景をあらためて精査する必要がある。また、ILO総会における日本の政労使代表が、それぞれの条約に対してどのような態度を表明してきたのか、整理する作業を行っている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02111
ID情報
  • 課題番号 : 19K02111
  • 体系的課題番号 : JP19K02111