2014年8月
農山村地域における小水力発電導入による地域再生効果の検証―長野県馬曲温泉を事例に―
水利科学
- 巻
- 58
- 号
- 338
- 開始ページ
- 111
- 終了ページ
- 154
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- 出版者・発行元
- 水利科学研究所
本稿が注目する事例は,長野県木島平村にある馬曲温泉と,そこで利用されている小水力発電である。この小水力発電は1988年に導入されて以降,温泉で一貫して利用されてきた。2011年から電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(以下,RPS法と表記)に基づいて売電も行っている。こうした経緯から,木島平村は長野県において小水力発電のモデル地域の1つとして県に指定され,現在もう1つの小水力発電所の建設を目指すなど,小水力発電を含む再エネの更なる導入に取り組んでいる(2011年11月16日付信濃毎日新聞朝刊記事;2013年9月4日付信濃毎日新聞朝刊記事)。小水力発電について20年以上の経験を有する馬曲温泉では,小水力発電を通じて,現在どういう再生効果を得,どういう課題に直面しているであろうか。これらを検討することは,今後農山村地域で小水力発電や再エネを導入したり,利活用をしようとする際に貴重な示唆を提供するものと考える。そして,再エネ研究で蓄積され,展開されてきた理論的枠組みが妥当かどうかを検討する上でも,貴重な事例であると考える。馬曲温泉の事例を検討することを通じて,もう1つの課題に取り組みたい。それは,FIT以降の小水力発電をめぐる課題や政策について検討することである。昨今,ポストFITを視野に入れた検討をすべきだという議論が提起されている(小林,2013)。また,現在地域ではFIT等再エネをめぐる制度の今後について不確定な要素が少なからずあるということを理由に再エネの導入や利活用に対して慎重な姿勢を示す事例も出ている(2014年3月12日付山陰中央新聞記事)。再エネはその性質や特徴を考えても,中長期的な視野で導入や利活用を検討することが必要だと考えるが,こうした事例は,FIT以降の再エネの利活用という視点も持ちながら事例を検証することが必要となっていることを示している。本稿が検討する事例では,FITではなく,RPS法に基づいて売電を行っている。このことも事例から貴重な示唆が得られると考える。本稿では以上のことを念頭に置きながら,小水力発電を導入する事例を検討することで再エネの利活用を図る上での課題を明らかにし,政策的措置のあり方を検討する。本研究を通じて今後小水力発電を導入する地域への示唆を抽出するとともに,事例検証から再エネ研究へのフィードバックも試みたい。
- リンク情報
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- CiNii Articles
- http://ci.nii.ac.jp/naid/120005863648
- CiNii Books
- http://ci.nii.ac.jp/ncid/AN00125003
- URL
- http://id.ndl.go.jp/bib/025774206
- URL
- http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010873336 本文へのリンクあり
- ID情報
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- ISSN : 0039-4858
- CiNii Articles ID : 120005863648
- CiNii Books ID : AN00125003