本稿では、小学校の国語科教育に焦点を当て、国語科で論じられている「深い学び」を整理することで、国語科の授業を受ける子どもたちに「深い学び」が生まれるための新たな方向性を提案した。また、本稿では、教育現場における「深い学び」をめぐる議論がどうあるべきかについても検討した。考察の結果、「深い学び」をめぐる議論は、「学習指導要領に記載された指導事項の確実な達成」にとどまるべきものではなく、子どもたちの世界観や思想・価値観の変容を見通したものでなければならないことが明らかとなった。本稿で残された課題は、子どもたちの世界観や思想・価値観の変容を見とるための教員や研究者の方法論や、多様性を包摂する社会の実現に向けた授業づくりの具体化であり、これまでの先行研究を踏まえつつ、より精緻に検証する必要がある。