Research Projects

Apr, 2003 - Mar, 2006

戦間期・戦時期日本の社会事業に関する社会経済史的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業  基盤研究(C)

Grant amount
(Total)
2,800,000 Japanese Yen
(Direct funding)
2,800,000 Japanese Yen
(Indirect funding)
0 Japanese Yen
Grant type
Competitive

1.本研究の成果は、近代日本の社会事業を都市の社会経済史研究の視点から明らかにする意義とその方法に関する内容と、当該期の都市社会事業における方面委員と方面事業の位置、および個別都市における方面事業の実態に関する3点にまとめることができる。以下、これら3点と今後の課題を、2〜5にまとめる。 2.都市の社会経済史的研究の視点から社会事業を扱う場合に重要なことは、都市公共団体の社会福祉に関する政策領域とともに、地域社会末端において公共団体に事業を委任され活動している組織や団体に注目することであった。本研究においては、この典型として、方面委員制度を取り上げることとした。 3.米騒動後、内務省は都市社会事業の実施を地方公共団体に指示したが、方面委員制度はそれ以前から存在した。方面事業の私的側面と公的側面について、大阪府方面事業の指導者であった小河滋次郎は、方面事業は委員個人の「市民としてまた公民として」の資質に委ねられるべきで、「公利公益の為め」であってはならない点、委員の「至誠」と「熱情」が重視される点を主張した。この議論はその後に影響力を持ち、戦時期においても、方面事業は委員が持つ「自主的輔導」の側面が重視された。 4.川崎と大阪における救護法制定前後の方面委員の活動の実態をみると、方面委員自らが要求した救護法は方面委員によって運用されたものの、救護法の対象外である無籍者の救済や救護法を用いない職業輔導による救済など、救護法の対象範囲や救済領域外における事業を積極的に進めた。 5.今後の研究課題として、平成17年度から本格的に開始した農村社会事業と農村における救済を地域の末端で支えた共同関係や地主小作関係との関連を明らかにし、当該期社会事業の全体像を構築していきたい。