2021年4月 - 2024年3月
マクロファージの極性制御を基軸とした難治性硬軟組織疾患の病因解明と新規治療法開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
歯科インプラントを用いた欠損補綴治療は予知性の高い優れた治療選択肢であるが,健康寿命の延伸に伴い一層の長期安定性が求められている.一方,インプラント周囲に惹起されるビスホスホネート製剤関連顎骨壊死とインプラント周囲炎は難治性の硬軟組織疾患であり,病因は不明で確定的な治療法はなく,臨床的に大きな問題となっている.一方,マクロファージ(MΦ)は炎症や創傷治癒に重要な役割を果たす免疫細胞のひとつで,近年では炎症性MΦ(M1MΦ),組織修復性MΦ(M2MΦ),ならびに骨性MΦ(Osteomacs)の存在と機能が解明されつつあるが,口腔内硬軟組織におけるこれらMΦの分布や機能は不明である.近年,研究代表者らは,細胞移植によりマウスBRONJが治癒・寛解し,組織内ではM2MΦとM1MΦの比率がM2へシフト(極性変化)することを突き止めた.本研究は,マクロファージの極性制御を基軸とし,難治性硬軟組織疾患であるインプラント周囲BRONJとインプラント周囲炎の病因解明と新規治療法開発に対する基盤を構築することを目的とした.本年度はラットを用い、ビスホスホネート製剤とステロイド製剤の併用投与にインプラント埋入を組み合わせた高頻度発現型ラットインプラント周囲BRONJモデルと,LPSで誘発したインプラント周囲炎モデルの開発に成功した。そして、インプラントBRONJ周囲の病態形成には、M1MΦとM2MΦの極性変化が重要な役割を果たす可能性を明らかにした。さらにインプラント周囲BRONJにおける組織病理学的・免疫病理学的解析から、インプラント周囲BRONJは天然歯周囲のBRONJと異なり、広範囲に拡大する可能性も示唆された。以上は複数の学会で報告され、論文化することができた。なお,インプラント周囲炎モデルについては現在解析を行っている段階である.
- ID情報
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- 課題番号 : 21K09980
- 体系的課題番号 : JP21K09980
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