2017年4月 - 2020年3月
火山近傍テフラの残留磁化の基礎研究:磁化獲得過程と古地磁気記録としての信頼性
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
過去の研究により、巨大噴火によって広域テフラの残留磁化方位(堆積残留磁化の方位)は、同時に噴出した火砕流堆積物の溶結部から得た残留磁化方位(熱残留磁化の方位=古地磁気方位)と一致することが報告されている。本研究では,より小規模な噴火で形成された火山近傍の火山灰層の残留磁化が古地磁気記録としてどの程度の信頼性(確度・精度)があるかを評価するために,近年噴出した火山灰層の古地磁気方位測定を行い,地磁気方位との比較を行っている。本年度は,阿蘇中岳で採取した2016年10月噴火で噴出・堆積した粘土質火砕物(火山灰),雲仙火山の1991-1992年の噴火によって畑に堆積した火山灰試料の古地磁気学的測定を行った。これまでに得たデータによれば,火山灰の残留磁化は,地球磁場方向に,ほぼ一致する場合といくらか伏角が浅くなる場合があるようである。残留磁化の偏角については,当時の値にまずまず近い値をもつ。このような違いの原因は不明であるが,火山灰は地球磁場方向に残留磁化をもつが,磁化獲得後の火山灰層の経年変化(たとえば火山灰層の圧縮)の影響を多かれ少なかれ受けるのかもしれない。このような記録媒体の経年変化は,火山岩にはない性質であり,火山灰の残留磁化の確度・精度を検討するのに重要であることが明確になった。今後は露頭における火山灰堆積物の記載や火山灰粒子の構成についても検討しながら,残留磁化データの解釈を進める必要がある。
- ID情報
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- 課題番号 : 17K05683
- 体系的課題番号 : JP17K05683