共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年7月 - 2022年3月

性同一性障害の診断を例にした精神医学的診察の会話分析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)
  • 鶴田 幸恵
  • ,
  • 黒嶋 智美

課題番号
18KT0075
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

性同一性障害のカウンセリング(面接)について分析を進めるのに、かつて東京のAメンタルクリニックにおいて収集した、臨床心理士ならびに精神科医と患者の面談の分析を進めた。今年度は、得に精神科医と患者との面接に注目した。
第一に、精神科医は面接において、臨床心理士の聞き取り内容を、間違いがなければそのまま受け取るべき内容の確認事項として扱いっていた。一方、患者は精神科医の志向性を理解し、確認事項を特段の注意を向ける必要がないものとして扱っていた。それに対して、第二に、精神科医は、独立に確認したい事項については身体的志向性を示すことで、面接の主な活動であるオピニオンのための聴取にとって、レリヴァントなことがらとして扱っていた。他方、患者は、医師の志向に合わせた承認のデザインをし、推論可能なことがらとして認めていた。
ここからわかったのは、何のための質問であるのかを精神科医が示すことが可能であり、GIDオピニオンにとってレリバントなことがらと、間違いがなければ受け止めるだけのことがらという精神科医のアジェンダに沿った区別がある、という表示がなされているということだ。前者はオピニオンに必要な情報の特定化のため、後者は確認を行ったという記録のため(for the record)になされ、なにがGIDオピニオンにとって特定化の必要なことがらであるかの評価は、必ずしも医師―患者間で一致しないため、それを前景化し患者の反応の仕方から、患者自身の視角を引き出すことに資するということがわかった。
さらに、面談で使われている「ふつう」という言葉が、精神科医と患者の双方においてどのように用いられているかを分析することで、患者が「前に自分の言ったことを覆してまでも、自分のしていることを正確に言う」という活動をしていたことが明らかになり、先行研究が言っているより面接が柔軟であることがわかった。