本研究の目的は，監査事務所レベルおよび監査担当パートナー・レベルの業種特化が監査の品質にどのような影響を与えているのかを明らかにすることである。特に，監査担当パートナー・レベルの業種特化については，これまでの先行研究において用いられてきた業種別市場占有率ではなく各業種における監査業務の経験年数に注目し分析を実施した。分析の結果，監査事務所レベルでは先行研究の指摘するような業種特化による監査の品質へのポジティブな影響は観察されなかった一方で，監査担当パートナー・レベルでの業種特化によって監査の品質を高めるような効果があることを発見した。