心的外傷後ストレス障害(PTSD)女性患者における認知機能について検討した。対象者はPTSD患者37名および健常対照者74名の計111名であり、年齢範囲は20〜64歳であった。JART(Japanese Adult Reading Test)得点を共変量とした共分散分析により、すべての指標においてPTSD群の成績が有意に低値であることが見出された。なかでも即時記憶、遅延記憶、総指標得点については1標準偏差(=15ポイント)以上の得点差がみられ、記憶の問題がとりわけ顕著であることが明らかになった。また、合併しているうつ病はPTSDの認知機能に有意な影響を及ぼさないこと、トラウマ曝露自体が認知機能に及ぼす影響は有意ではないことが示された。PTSD患者群において、PTSD重症度とRBANS(日本語版Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status)各指標得点の相関を調べたところ、即時記憶、注意力、遅延記憶および総指標得点とPosttraumatic Stress Diagnostic Scale(PDS)合計得点の間に有意な負の相関が認められた。