2021年3月1日
ヒト下顎皮質骨における近接領域の骨質の結晶学的性質
日大口腔科学
- 巻
- 47
- 号
- 1
- 開始ページ
- 19
- 終了ページ
- 24
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 日本大学口腔科学会
本研究はヒト骨の構造的強度の違いが,結晶学的性質とどのような関連を示しているのかを明らかにするために,微小部X線回析装置(Micro-X-ray diffraction:micro-XRD)を用いて結晶解析を行った。実験には10検体から採取したヒト下顎皮質骨を使用し,代表的な2検体の結果を示す。下顎皮質骨は外径3.8mmの骨トレフィンバーを使用して直径約3mm大に採取し,生理食塩水中に保存した。蒸留水で洗浄した後に乾燥させた。micro-XRDにてX線ビーム径100μmで各試料ごとに2ヶ所を測定し,測定部位の間隔は1mm以内とした。その結果,分析対象の部位はいわゆる"生体アパタイト結晶"で構成されており,002回折ピークの半値全幅(The full width half maximum:FWHM)値は広い範囲を示し,crystallite sizeは大きな値の変動を示した。また,結晶格子のa軸長(a-axis),c軸長(c-axis)の値は測定箇所によって異なる数値を示した。これらの結果は,骨の組成やcrystallite sizeが骨のリモデリングおよび組織学的性質により,極めて近接した部分においても差異のある可能性が示唆された。今回の測定箇所は同一サンプルの1mm以内の領域で観察されたものであり,このように近接した領域におけるヒト下顎皮質骨のFWHM値の変化は報告されていない。また,本研究で示されたような小さなFWHM値は報告が少ない。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0385-0145
- 医中誌Web ID : 2021252435