目的:ベビーブーマー世代が後期高齢者を迎える2025年に向けて、我が国は地域で在住する高齢者に対する包括ケアの創設に苦慮している。本研究は要介護認定高齢者におけるヘルスケアサービスの受療行動に対する季節要因の影響を検討し、高齢者対策に向けた示唆を得ることである。方法:本研究では研究協力の得られた北海道A市の医療保険と介護保険の後向きパネルデータを使用した。要支援1、要支援2、要介護1〜5の認定を受けている65歳以上の要介護認定高齢者1793名を対象とした。データは2007〜2009年の7月、12月の6調査時点の医療レセプトと介護レセプト、要介護認定調査の調査結果を収集し、個人毎に突合した。ヘルスケアサービスの利用率と季節要因の関連を調べるため、1ヵ月のヘルスケアサービス(入院医療/外来医療/居宅/介護施設サービス)の利用の有無を従属変数、個人属性(年齢・性別・所得・認知度・寝たきり度)を独立変数としたプロビット分析を行った。同様に、1ヵ月のヘルスケアサービス費(入院医療費/外来医療費/居宅サービス費/施設サービス費)を従属変数、個人属性を独立変数とするトービット分析を行った。結果:対象者の2007年の年齢は84歳、71%は女性であった。対象者のほとんどは認知機能と身体機能に障害があり、収入は低かった。対象者の属性には季節と年度によって差はなかった。外来サービスの利用率は夏季に比べて冬季で減少し、介護保険施設サービスの利用率は夏季に比べて冬季に上昇することがプロビット分析で明らかになった。また、外来医療費は夏季に比べて冬季に減少することが明らかになった。属性とヘルスケアサービスの関係においては、重度な認知機能障害があるほど、身体機能障害があるほど、入院医療費や介護保険施設サービス費が有意に増加することがトービットモデルで明らかになった。結論:本研究の結果から、要介護認定高齢者では季節によりヘルスケアサービスの利用に影響する可能性が示唆された。高齢者の地域包括ケアを考慮する際は、気象条件による医療・介護サービスへの影響を留意する必要がある。(著者抄録)