2019年4月 - 2022年3月
18世紀後半における「儒者」の総合的研究――頼春水とその周辺
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
本年度は、頼春水を含めた寛政期朱子学者の出現に至るまでの思想史的経緯を、とくに朱子学に注目して明らかにした。また春水の交友関係を中心とした人的ネットワークのデータベース化を実施した。
春水を含め、寛政期に活躍した正学派や懐徳堂の思想史的ルーツは、18世紀前半の朱子学に求められる。当該期朱子学の思想的課題は、一つは「文」と「道徳」の関係であり、もう一つが「道徳」の内実である。
「文」と「道徳」の問題は、徂徠学派との対立に関わる。徂徠学派は一般的に朱子学者以上に能文だったため、朱子学者は道徳を主張してこれに対抗するのが通例であった。しかしその「道徳」の内実をめぐり、朱子学者はむしろ分裂を深めた。朱子学に依拠した道徳の主張は、忠誠論において二つの問題を引き起こす。第一に朝廷と幕府が併存するなかでの忠誠対象の選択、もう一つは日本での忠誠を朱子学という外来思想で根拠づけることの是非である。これらは垂加神道を経由して「文」と「道徳」の関係にもフィードバックして学者間の意見対立を生み、状況を一層複雑化した。
この状況を克服する可能性は五井蘭洲の思想に認められ、これが後の懐徳堂や正学派の思想および人的交流に影響したものと考えられる。
またデータベースは既に公開されており利用可能である(https://jbdb.jp/#/)。随時見直しとデータの追加を行った。今年度は新たに『春水日記』以外に、藤樹書院訪問者のデータが収集された。
春水を含め、寛政期に活躍した正学派や懐徳堂の思想史的ルーツは、18世紀前半の朱子学に求められる。当該期朱子学の思想的課題は、一つは「文」と「道徳」の関係であり、もう一つが「道徳」の内実である。
「文」と「道徳」の問題は、徂徠学派との対立に関わる。徂徠学派は一般的に朱子学者以上に能文だったため、朱子学者は道徳を主張してこれに対抗するのが通例であった。しかしその「道徳」の内実をめぐり、朱子学者はむしろ分裂を深めた。朱子学に依拠した道徳の主張は、忠誠論において二つの問題を引き起こす。第一に朝廷と幕府が併存するなかでの忠誠対象の選択、もう一つは日本での忠誠を朱子学という外来思想で根拠づけることの是非である。これらは垂加神道を経由して「文」と「道徳」の関係にもフィードバックして学者間の意見対立を生み、状況を一層複雑化した。
この状況を克服する可能性は五井蘭洲の思想に認められ、これが後の懐徳堂や正学派の思想および人的交流に影響したものと考えられる。
またデータベースは既に公開されており利用可能である(https://jbdb.jp/#/)。随時見直しとデータの追加を行った。今年度は新たに『春水日記』以外に、藤樹書院訪問者のデータが収集された。
- ID情報
-
- 課題番号 : 19K00118
- 体系的課題番号 : JP19K00118
この研究課題の成果一覧
絞り込み
論文
1-
日本学研究 30 95-107 2020年7月 査読有り
講演・口頭発表等
3-
Confucian Scholars in the Late Tokugawa Period 2021年12月19日
-
Symposium : Confucian Scholars in the Late Tokugawa Period 2021年12月19日
-
Symposium:Confucian Scholars in the Late Tokugawa Period 2021年12月19日
メディア報道
1-
https://www.youtube.com/watch?v=LbCq4I6UGt8 2022年12月 インターネットメディア