2017年6月 - 2022年3月
肺線維症における炎症細胞社会
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
本計画研究は、新規包括的single-cell transcriptome解析法Nx1-Seqを用い、肺線維化組織における細胞相互作用ネットワーク、そのモデル化によるネットワーク動態と動作原理の解明、及びモデルに基づく肺線維症新規予防・治療戦略の策定を目的としている。今年度は、薬剤誘導性の肺胞上皮傷害を起点として急性炎症後に一過性の線維化が進行するブレオマイシン誘導肺線維症モデルを用いて、正常、炎症早期、炎症終期(線維化期)と炎症細胞社会が変遷する過程の細胞間・分子間相互作用を解析した。正常、炎症早期、炎症終期のマウス肺から、血管内血球画分を除いた細胞懸濁液を調整し、Nx1-Seqを用いて各病態ステージにおける包括的single-cell transcriptome像を得た。検出された遺伝子のうち、細胞表面または細胞外のタンパク質をコードしている遺伝子を抽出し、既存の遺伝子相互作用ネットワーク推定アルゴリズム、および分子間相互作用データベースを用いて、各レセプター/リガンド間相互作用ネットワークを構築した。構築されたネットワークと各1細胞のレセプター/リガンド発現量に基づき、各細胞同士の結びつきを同定し、細胞間相互作用ネットワークを再構築した。ネットワーク内において、結びつきが強い細胞で構成されるサブネットワークを同定した。炎症早期には、TGFb1, Pdgfa, Spp1, Ccl2, Col1a2等の線維化や炎症においてHubな役割を果たす分子を中心に構成される11個のサブネットワークを認め、一方炎症終期にはこれらのサブネットワークが5つに収束していた。細胞間相互作用ネットワーク解析により、線維化疾患の進行過程における炎症細胞社会の変遷を示すパイオニア的研究成果と考えている。
- ID情報
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- 課題番号 : 17H06392
- 体系的課題番号 : JP17H06392