共同研究・競争的資金等の研究課題

1996年 - 1996年

銀河形成と進化の理論的研究に基づく観測的宇宙論の考察

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
08640318
体系的課題番号
JP08640318
配分額
(総額)
2,100,000円
(直接経費)
2,100,000円

クウェーサ-のスペクトルには、ライマンアルファの森と呼ばれる多数の吸収線が観測されており、これらは銀河間にあって小さなサイズの暗黒物質(ミニハロ-)によって束縛された中性水素雲による現象であると考えられてきた。そして、このような雲は銀河になり損ねたガスであるとするモデルで良く説明されてきた。ところが、最近の観測によれば、吸収線系の多くが系外銀河周辺のガスに直接関連していることが示唆されており、さらに、Keckによる高分散観測によって、吸収線系の半分以上に重元素が見つかっており、ミニハロ-起源以外の吸収線系を示唆する。そこで我々は、ミニハロ-ならびに銀河ハロ-に束縛された星間ガスの物理状態を考察し、これらの観測結果を自然に説明できる理論模型を提案した。特に、吸収線系のうち重元素を含む割合は、ミニハロ-か又は銀河ハロ-かを区別する質量スケールと密接に関係しており、この質量として光電離を考慮した銀河形成モデルで与えられる値を採用すれば、重元素を含む吸収線系の割合を再現できることを初めて示した。また、吸収線系における重元素量は、標準的な銀河形成論で与えられる銀河形成の時期と銀河系ハロ-星で報告されている年齢と重元素量との間の相関関係を用いて説明できることを示した。また、我々は、膨張宇宙の基本定数を決定する方法の有力な一つである、クウェーサ-の重力レンズ統計に関して検討を行った。これまでのレンズモデルに従えば、大きな値の宇宙項Aは否定されると考えられてきた。しかし、この結論は、レンズ現象を実質的に引き起こす早期型銀河の数分布及び質量分布の情報に強く依存している。我々は、早期型銀河に関する最新の観測情報を取り入れることによって新たなレンズ統計のモデルを構築し、HSTによるレンズ探査の観測結果を説明するためには、大きなAでかつ平坦な宇宙が示唆されることを明らかにした。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-08640318
ID情報
  • 課題番号 : 08640318
  • 体系的課題番号 : JP08640318