共同研究・競争的資金等の研究課題

2005年 - 2006年

新規発散型配位子による高次構造の精密制御と発光材料開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業  若手研究(B)

配分額
(総額)
3,700,000円
(直接経費)
3,700,000円
資金種別
競争的資金

近年,機能性材料として配位高分子錯体が注目を集めており,精力的に研究が展開されている.我々は、これまでにトリエチルベンゼン骨格を有する配位子(2Py3Et3)が配位高分子錯体構築の優れたビルディングブロックとなることを見出し、この配位子を用いて機能性材料の研究に関して精力的に研究を展開してきた。この配位子は様々な金属イオンと錯体を形成して高分子錯体を形成することができる。さらに、本配位子は分子内に金属を取り込むタイプの従来の配位子とはことなり,金属、クラスターなどの機能部位を均一に配置させることができる発散型の配位子である。
銅(I)ハロゲン化物を用いて合成した珍しい銅-ハロゲン6核クラスターは、期待通り銅クラスタ部位が10.95Åの距離で均一に分散している2D-シート構造であった.さらに本錯体はUV照射により発光する特性をもつことが明らかとなった.この他に、金属配位部位のピリジン環窒素原子の位置が異なる配位子(4Py3Et3)を用いて合成したハロゲン化銅錯体は全く異なった高分子構造有しており、ヨウ素(I)の場合のみ発光特性が確認された.また単核銅発光錯体も合成できた。
次に、6核クラスター含有錯体の発光のメカニズムに関して検討した。Jaguarを用いた量子計算により、本錯体の分子軌道を求め、そのエネルギー遷移に関して検討した。その結果、ピリジンがUV照射により励起され、空となった軌道のエネルギーに非常に近いCu_6X_6クラスターから電子が移動し、この状態から緩和した電子がクラスターに向かってエネルギーを放出する際に、エネルギーを放出して、発光すると結論付けた。これによれば、Cu-Xの結合距離が発光波長に影響を与えることを説明することができる。
今後さらに、多彩な構造を有する錯体を合成し、機能性材料を開発していく計画である。