基本情報

所属
東京大学 大学院総合文化研究科 地域文化研究専攻 准教授
学位
学術修士(東京大学大学院総合文化研究科)
社会学博士(一橋大学大学院社会学研究科)

J-GLOBAL ID
200901086045243176

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今後、世界各国でどれだけ都市化が進んだとしても、近い将来に農村が消失することは考えられません。したがって、今後の長期にわたって、地域研究には次の二つの姿勢が必要かつ有効だと考えます。すなわち、①農村に留まり続ける人々が、都市に出ずとも支障なく生活を送り、一定の尊厳をもって生きられること、そのために農村地域の持つ資源や可能性を探ること(「問題」としての農村)、および②各国・各地域の特質を理解する上で、農村・農民の暮らしの実態の観察から研究を開始し、下から上へと、徐々に大きな政治や経済の問題に接近していくこと(「方法」としての農村)です。
私の主な研究手法は、農村地域に実際に赴いてフィールド・ワークを実施し、問題を発見したのちに、フィールド・データを文献資料で補いつつ、農村社会学のフレーム・ワークを用いて現象を概念化し、分析することです。人々の「暮らし」に視点を据えた「半径50メートルの地域研究」だと思っています。中国農村を中心としながら、中国国内の地域間比較、あるいはロシア、インド、日本などとの比較にも関心があります。
これまでに取り組んできたテーマは、大きく(1)中華人民共和国建国初期の農村基層政権、(2)村落ガバナンスとその資源、(3)農村リーダー論、(4)比較農村研究、(5)都市=農村関係と県域社会、(6)農民の行動ロジック、の六つほどの領域に分けられます。詳細は以下の通りです。
(1)中華人民共和国建国初期の農村基層政権
これは大学院生時代の研究テーマです。人民共和国建国初期、共産党政権は何故、津々浦々の農村に支配を及ぼす事ができたのか。この問いをめぐり、留学中に実施した関係者へのインタビューを主軸として、エリート研究の手法で分析した博士論文で1998年に学位を取得しました。これを基にした著書が、『中国農村の権力構造─建国初期のエリート再編』(2004)です。
(2)村落ガバナンスとその資源
2000年前後から、徐々に中国農村でのフィールド・ワークに従事するようになり、複数の拠点村の定点観測に発展していきました。これが現在まで続いている「比較村落ガバナンス論」です。一見してばらばらで、自分勝手にさえ見える中国農民が、いかなる領域において、どのような条件の下で「つながり」、あるいは「まとまる」ことが可能になるのか、というのが主たる問題意識です。20年ほど続いたこの研究には、新刊『草の根の中国─村落ガバナンスと資源循環』(2019)でひとまずの区切りを付けました。
(3)農村リーダー論
村落ガバナンス研究を進める中で、中国の近現代を貫きつつ、ローカルな公共性と国家・革命政党との結節点に「農村リーダー」が存在したことが浮かび上がり、その形成過程について『二十世紀中国の革命と農村』(2008)で大まかなイメージを提示しました。また同じ農村リーダーの問題を一国の政治システムの中に位置づけて論じたのが、山東人民出版社から中国語で出版した『日本視野中的中国農村精英: 関係、団結、三農政治』(2012)です。
(4)比較農村研究
2009年からは新領域研究「ユーラシア地域大国の比較」プロジェクトの仕事が大きな比重を占めるようになり、中国同様のフィールド・ワークをロシア、インドの農村でも展開してきました。その成果の一部が、「地方ガバナンスにみる公・共・私の交錯」(2013)、“Principal, Agent or Bystander?: Governance and Leadership in Chinese and Russian Villages” (2013)、“Client, Agent or Bystander? Patronage and Village Leadership in India, Russia and China” (2015)、“A Village Perspective on Competitive Authoritarianism in Russia” (2016)などです。このほか、日中農村の比較の試みとしては、昔の論文ですが「村落自治の構造分析」(2001)があります。
(5)都市=農村関係と県域社会
「村落」からより大きな都市=農村関係に目を向けたのが、「都市=農村間の人的環流」(human circulation)をめぐる研究です。現在、急速に都市化が進む中国ですが、この現象を理解するためには一時的な"migration"ではなく、長期的な"circulation"を見極める必要がある、というのがここでの核心的なアイデアとなります。さらに、中国の都市=農村関係を考えるうえで決定的に重要になるのが、とかく注目されがちな大都市ではなく、「県城」と呼ばれる小都市です。このアイデアは、2015年度から2018年度にかけての科研基盤研究(B)「現代中国における都市=農村関係と『県域社会』」において展開しました。関連する主な文章として、「コミュニティの人的環流―中国都市近郊農村の分析」(2011)や「中国の都市化政策と県域社会─『多極集中』への道程」(2015)があります。また(3)の比較の視野から中国の都市=農村関係を論じたものとして、「都市=農村間の人的環流─中露比較の試み」(2019)があります。
(6)農民の行動ロジック
他方で、「村落」から出発し、よりミクロな方向に問題を深めようとしたのが「農民の行動ロジック」の研究です。「ポスト税費時代」とよばれる今日の中国農村で、農民の行動ロジックがドラスティックに変化しつつあることを指摘したのが、「弱者の抵抗を超えて─中国農民の『譲らない』理由」(2018)や、「『発家致富』と出稼ぎ経済─21世紀中国農民のエートスをめぐって」(2018)などです。

以上

学歴

  6

書籍等出版物

  7

論文

  37

MISC

  32

講演・口頭発表等

  7

共同研究・競争的資金等の研究課題

  6

所属学協会

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