田原 史起

J-GLOBALへ         更新日: 19/01/18 17:26
 
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研究者氏名
田原 史起
 
タハラ フミキ
所属
東京大学
部署
大学院総合文化研究科 地域文化研究専攻
職名
准教授
学位
学術修士(東京大学大学院総合文化研究科), 社会学博士(一橋大学大学院社会学研究科)

プロフィール

 今後、世界各国でどれだけ都市化が進んだとしても、近い将来に農村が消失することは考えられません。したがって、今後の長期にわたって、地域研究には次の二つの姿勢が必要かつ有効だと考えます。すなわち、①農村に留まり続ける人々が、都市に出ずとも支障なく生活を送り、一定の尊厳をもって生きられること、そのために農村地域の持つ資源や可能性を探ること(「問題」としての農村)、および②各国・各地域の特質を理解する上で、農村・農民の暮らしの実態の観察から研究を開始し、下から上へと、徐々に大きな政治や経済の問題に接近していくこと(「方法」としての農村)です。
 私の主な研究手法は、農村地域に実際に赴いてフィールド・ワークを実施し、問題を発見したのちに、フィールド・データを文献資料で補いつつ、農村社会学のフレーム・ワークを用いて現象を概念化し、分析することです。人々の「暮らし」に視点を据えた「半径50メートルの地域研究」だと思っています。中国農村を中心としながら、中国国内の地域間比較、あるいはロシア、インド、日本などとの比較にも関心があります。
 これまでに取り組んできたテーマは、大きく(1)中華人民共和国建国初期の農村基層政権、(2)村落ガバナンスとその資源、(3)比較農村研究、(4)都市=農村関係と県域社会、(5)農民の行動ロジック、の五つの領域に分けられます。詳細は以下の通りです。
 (1)中華人民共和国建国初期の農村基層政権
 これは大学院生時代の研究テーマです。人民共和国建国初期、共産党政権は何故、津々浦々の農村に支配を及ぼす事ができたのか。この問いをめぐり、留学中に実施した関係者へのインタビューを主軸として、エリート研究の手法で分析した博士論文で1998年に学位を取得しました。これを基にした著書が、『中国農村の権力構造─建国初期のエリート再編』(2004)です。
 (2)村落ガバナンスとその資源
 2000年前後から、徐々に中国農村でのフィールド・ワークに従事するようになり、複数の拠点村の定点観測に発展していきました。これが現在まで続いている「比較村落ガバナンス論」です。一見してばらばらで、自分勝手にさえ見える中国農民が、いかなる領域において、どのような条件の下で「つながり」、あるいは「まとまる」ことが可能になるのか、というのが主たる問題意識です。この系譜の文章は比較的多いですが、新しいものとして、「『資源』としての人民公社時代─中国西北農村のガバナンス論序説」(2018)があります。村落ガバナンス研究を進める中で、中国の近現代を貫きつつ、ローカルな公共性と国家・革命政党との結節点に「農村リーダー」が存在したことが浮かび上がり、その形成過程について『二十世紀中国の革命と農村』(2008)で大まかなイメージを提示しました。また北京、山東、江西、甘粛などの村々で採集したミクロ・データを素材として、それを中国の政治システム全体における「農村リーダー」の位相とも絡めながら論じたのが、山東人民出版社から中国語で出版した『日本視野中的中国農村精英: 関係、団結、三農政治』(2012)です。
 (3)比較農村研究
 2009年からは新領域研究「ユーラシア地域大国の比較」プロジェクトの仕事が大きな比重を占めるようになり、中国同様のフィールド・ワークをロシア、インドの農村でも展開してきました。その成果の一部が、「地方ガバナンスにみる公・共・私の交錯」(2013)、“Principal, Agent or Bystander?: Governance and Leadership in Chinese and Russian Villages” (2013)、“Client, Agent or Bystander? Patronage and Village Leadership in India, Russia and China” (2015)、“A Village Perspective on Competitive Authoritarianism in Russia” (2016)などです。このほか、日中農村の比較の試みとしては、昔の論文ですが「村落自治の構造分析」(2001)があります。
 (4)都市=農村関係と県域社会
 「村落」からより大きな都市=農村関係に目を向けたのが、「都市=農村間の人的環流」(human circulation)をめぐる研究です。現在、急速に都市化が進む中国ですが、この現象を理解するためには一時的な"migration"ではなく、長期的な"circulation"を見極める必要がある、というのがここでの核心的なアイデアとなります。さらに、中国の都市=農村関係を考えるうえで決定的に重要になるのが、とかく注目されがちな大都市ではなく、「県城」と呼ばれる小都市です。このアイデアは、2015年度から2018年度にかけての科研基盤研究(B)「現代中国における都市=農村関係と『県域社会』」において展開中です。関連する主な文章として、「コミュニティの人的環流―中国都市近郊農村の分析」(2011)や「中国の都市化政策と県域社会─『多極集中』への道程」(2015)があります。また(3)の比較の視野から中国の都市=農村関係を論じたものとして、「都市=農村間の人的環流─中露比較の試み」(2019近刊)があります。
 (5)農民の行動ロジック
 他方で、「村落」から出発し、よりミクロな方向に問題を深めようとしたのが「農民の行動ロジック」の研究です。「ポスト税費時代」とよばれる今日の中国農村で、農民の行動ロジックがドラスティックに変化しつつあることを指摘したのが、「弱者の抵抗を超えて─中国農民の『譲らない』理由」(2018)や、「『発家致富』と出稼ぎ経済─21世紀中国農民のエートスをめぐって」(2018)などです。

以上

研究分野

 
 

経歴

 
2007年4月
 - 
現在
東京大学 大学院総合文化研究科 准教授
 
2002年4月
 - 
2007年3月
東京大学 大学院総合文化研究科 助教授
 
2000年10月
 - 
2002年3月
東京大学 大学院総合文化研究科 講師
 
1998年4月
 - 
2000年9月
新潟産業大学 人文学部 講師
 

学歴

 
1994年4月
 - 
1998年3月
一橋大学 大学院社会学研究科 
 
1992年4月
 - 
1994年3月
東京大学 大学院総合文化研究科 
 
1986年4月
 - 
1992年3月
一橋大学 社会学部 
 
1983年4月
 - 
1986年3月
広島大学附属福山高等学校  
 

書籍等出版物

 
《日本視野中的中国农村精英: 关系、团结、三农政治》
田原 史起
山东人民出版社   2012年9月   ISBN:978-7-209-06449-1
《日本视野中的中国农村精英:关系、团结、三农政治》以对农村精英的关注为主线,深入系统地研究了不同时期和不同区域中国村庄社会资本、经济发展水平与乡村治理的关系。本书分为两个部分,共八章内容。第一部分作者根据在中国农村获得的田野调查材料,讨论农村精英和农村社区之间的关系;第二部分则试图掌握整个中国的政治环境,并重新对夹在国家与农民之间的农村精英进行定位。
『二十世紀中国の革命と農村』
田原 史起
山川出版社   2008年4月   ISBN:978-4-63434962-9
中国社会にとって革命とは何だったのか。現在の中国農村に社会主義の経験は何をもたらしたのか。二十世紀を中心とする約一〇〇年間のスパンをもって、中国革命と社会主義建設の推進された農村の現場に目線を据えながら、国家と社会の狭間にあって両者を媒介した「農村リーダー」たちの変遷をたどってみた。彼らを取り巻く栄光と挫折、自由と制約、連帯と孤立は、時代を通じてどのように移り変わってきたのだろうか。
『中国農村の権力構造─建国初期のエリート再編』
田原 史起
御茶の水書房   2004年3月   ISBN:4-275-00311
中国農村の「基層自治」はコミュニティの範囲を超えた「地方自治」に発展しうるのか?市場化の進展にもかかわらず、まだ圧倒的に農業社会であり続けている中国を対象とし、その政治発展の形式を見極めることが本書の目的である。人民共和国建国初期の県、基層エリート再編の比較を主軸に、地域的、時期的変数をも取り込みながら、農村政治をめぐる広範囲の対話を目指す。
『現代中国農村における権力と支配─人民共和国建国初期の土地改革と基層政権(1949-1954)』
田原 史起
アジア政経学会   1999年3月   

論文

 
「弱者の抵抗を超えて─中国農民の『譲らない』理由」
田原 史起
『アジア経済』   59(3) 2-31   2018年9月   [査読有り]
本稿の課題は、「ポスト税費時代」と呼ばれる2006年以降の中国農民の行動ロジックとその背景に新しい光を当てて説明することである。問題意識の背景には、従来の中国農民の行動が、あまりに「弱者の抵抗」の文脈から捉えられすぎたため、等身大の農民・農村の姿が見えにくくなっていることへの危惧がある。課題遂行のためのフィールドとして、中国西北部の平凡な一農村を取り上げる。自己の経済的利益を主張しながらも、公共的なガバナンスにおいては非協力の態度を示す農民の行動は、もはや生存維持を賭しての弱者の抵抗とは呼...
「『資源』としての人民公社時代─中国西北農村のガバナンス論序説」
田原 史起
『村落社会研究ジャーナル』   (48) 1-13   2018年5月   [査読有り]
「発家致富」と出稼ぎ経済─21世紀中国農民のエートスをめぐって
田原 史起
谷垣真理子・伊藤徳也・岩月純一編『戦後日本の中国研究と中国認識─東大駒場と内外の視点』風響社   277-308   2018年3月   [招待有り]
農村ガバナンスと資源循環─「つながり」から「まとまり」へ
田原 史起
ODYSSEUS (東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻紀要)   (22) 139-161   2018年3月
A Village Perspective on Competitive Authoritarianism in Russia
TAHARA Fumiki
ODYSSEUS (東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻紀要)   (20) 87-110   2016年3月
中国の都市化政策と県域社会─「多極集中」への道程
田原 史起
ODYSSEUS (東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻紀要)   (19) 29-48   2015年3月
"Client, Agent or Bystander? Patronage and Village Leadership in India, Russia and China"
田原 史起
Shinichiro Tabata ed., Eurasia's Regional Powers Compared: China, India, Russia, London and New York: Routledge   85-105   2015年1月   [招待有り]
"Russia’s Local Reform of 2003 from a Historical Perspective: A Comparison with China"
MATSUZATO Kimitaka & TAHARA Fumiki
Acta Slavica Iaponica   34 115-139   2014年3月   [査読有り]
「地方ガバナンスにみる公・共・私の交錯」
田原 史起・松里 公孝
唐亮・松里公孝編著『ユーラシア地域大国の統治モデル』ミネルヴァ書房   151-179   2013年3月   [招待有り]
Fumiki Tahara
Europe-Asia Studies   65(1) 75-101   2013年1月   [査読有り]

Misc

 
「書評 小林一穂・秦慶武・高暁梅・何淑珍・徳川直人・徐光平『中国農村の集住化─山東省平陰県における新型農村社区の事例研究』」
田原 史起
『村落社会研究ジャーナル』   24(1) 55-56   2017年10月   [依頼有り]
「書評 丸田孝志『革命の儀礼─中国共産党根拠地の政治動員と民俗』」
田原 史起
『社会経済史学』   83(1) 149-151   2017年5月   [依頼有り]
"Book Review: Shigetomi, Shinichi and Ikuko Okamoto eds., Local Societies and Rural Development: Self-organization and Participatory Development in Asia,"
田原 史起
Development Economy   53(4) 305-308   2015年12月   [依頼有り]
「座談会 村研発足60周年座談会 先人の足跡を今に活かす」
柿崎京一・田原史起・黒栁晴夫・長谷部弘・竹内隆夫・岡江恭史・吉野馨子・國方敬司・市田知子・大友由紀子・河村能夫・池上甲一
『村落社会研究ジャーナル』   20(2) 10-38   2014年4月   [依頼有り]
「書評 于建嵘著・徐一睿訳・寺田道雄監修『移行期における中国郷村政治構造の変遷─岳村政治』」
田原 史起
『中国研究月報』   (791) 44-47   2014年1月   [依頼有り]
「書評 黒田由彦・南裕子編著『中国における住民組織の再編と自治への模索』」
田原 史起
『村落社会研究ジャーナル』   19(2) 63-64   2013年4月   [依頼有り]
「放浪の魅力に憑かれて 坂口安吾『暗い青春・魔の退屈』」
田原 史起
東京大学新聞社編『東大教師 青春の一冊』信山社   263-265   2013年3月   [依頼有り]
「中国18全大会を受けて―農村政策の領域に関して」
田原 史起
東京財団HP (http://www.tkfd.or.jp/research/china/s00319)      2012年12月   [依頼有り]
「座談会 永遠の社会主義―ロシア・ベトナム・中国・中東から問い直す」
青島陽子・青山弘之・亀山郁夫・田原史起・古田元夫・家田修
『地域研究』   10(2) 14-56   2010年3月   [依頼有り]
「中国研究者がロシアの農村で考えたこと」
田原 史起
『スラブ研究センターニュース』   (119) 9-14   2009年11月   [依頼有り]

講演・口頭発表等

 
田原 史起
Guest Lecture at SMU Tower Center   2018年10月23日   Political Science Department, Southern Methodist University
This presentation will reconsider the so-called “urban-rural dual structure” (城乡二元结构=chengxiang eryuan jiegou) in contemporary China, which is often perceived by Chinese scholars as a major social cleavage. The cleavage is neither universal nor “a...
「協力と非協力のあいだ─中国西北農村のガバナンスにみる「共同性」の変容」
田原 史起
第65回村落社会研究学会大会   2017年11月11日   
《“发家致富”与打工经济:探讨21世纪中国农民的精神》 [招待有り]
田原 史起
红河论坛第206场,红河学院文鼎楼2楼报告厅,云南省蒙自市   2014年11月26日   
"Doing Fieldwork in Chinese and Russian Villages" [招待有り]
田原 史起
Public Seminar Held in the Institute of Mass Communications and Social Studies, Kazan Federal University, Kazan, Russia   2013年9月5日   
「中国農村へのアプローチ」 [招待有り]
田原 史起
関西学院大学先端社会研究所2012年度定期研究会第8回(共同研究「中国国境域/雲南班」研究会第2回)   2013年2月15日   

競争的資金等の研究課題

 
現代中国における都市=農村関係と県域社会─「人的環流」からのアプローチ
文部科学省: 科学研究費補助金
研究期間: 2015年4月 - 2019年3月    代表者: 田原 史起
本研究課題の目的は,現代中国を理解するうえでの最重要テーマの一つである都市=農村関係につき,「県域社会」を舞台とした「人的環流」に着眼し,それら二重の視角から読み解くことで,中国社会に対する新しい動態的な理解の仕方を提示することである。この研究目的を達成するために,①中国全土に跨る北京,山東,河南,江西,甘粛,貴州の諸省に属する諸県において現地調査を通じたデータの集積を行い,②この基礎の上に立ち,メンバーがそれぞれの県域について,(a)政治・行政システムによる人的環流,(b)労働市場による...
地方政治の中・露・印比較─社会政策,地方自治,政党政治
文部科学省: 科学研究費補助金
研究期間: 2013年4月 - 2016年3月    代表者: 田原 史起
中国農村の基層ガバナンスと政府・市場・コミュニティ―内陸四村の比較分析
文部科学省: 科学研究費補助金
研究期間: 2012年4月 - 2015年3月    代表者: 田原 史起
中国西部内陸農村のコミュニティ公共建設と社会関係資本―甘粛・雲南村落の比較研究
文部科学省: 科学研究費補助金
研究期間: 2009年4月 - 2012年3月    代表者: 田原 史起
中国中部内陸農村の開発と社会関係資本-湖北・江西村落コミュニティの比較を通じて
文部科学省: 科学研究費補助金
研究期間: 2006年4月 - 2009年3月    代表者: 田原 史起