2020年4月 - 2024年3月
「家長的権力の濫用と「家」概念の裁判史――親権・戸主権濫用判決の横断的研究を通して」
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
第一に、国立公文書館が保存する下級裁判所民事判決原本のうち、『人事判決原本』や親権濫用判決、家督相続人廃除請求訴訟等について分析を進めた。まず、民事判決原本のうち原本のタイトルに「人事判決」「人事事件」等を含む人事訴訟に関する簿冊が999冊確認できた。地域としては東北、関東、四国、中国、九州各地の簿冊が含まれる。そのうち、明治期から昭和22年までの簿冊が846冊、昭和23年以降の簿冊が153冊であった。前者には一部昭和23年以降の記録も綴じこまれているものも存在する。後者については、昭和20年代~30年代前半の貴重な下級審判決が含まれている可能性があり、新たな研究素材として注目すべきと考える。
次に個別の判決の分析については、親権濫用判決において親権者である実父母への親権喪失請求訴訟において、子の「愛育」「監護」を放棄し「出奔」「放浪」した実父母に対し、親権喪失の理由として「著しい不行跡」が認定されている事例が複数存在した。実父の親権喪失の背景に禁治産宣告や強制隠居(事実上の廃戸主)などの事実が認定されている事例も確認できた。なお、明治23年以前の判決原本を対象とした国際日本文化研究センターの民事判決原本データベースにも明治24年以降の判決が存在することを確認し、実母の財産管理権を尊重する事例などを確認できた。また福岡地裁福島区裁判所の『明治35年中隠居、廃家、子ノ懲戒、家督相続人及ヒ親族会二関スル件』と題する簿冊も収集したが、編綴された判決のほとんどが親族会召集に関する事例であった。
第二に、広く「親権」に関する研究を深めるため、比較家族史学会にて「<産みの親>と<育ての親>の比較家族史①」と題するシンポジウムを企画運営し、2021年10月に学会を開催した。2022年6月にも継続して同テーマを拡大して開催するにあたり、プレシンポジウムを3回開催した。
次に個別の判決の分析については、親権濫用判決において親権者である実父母への親権喪失請求訴訟において、子の「愛育」「監護」を放棄し「出奔」「放浪」した実父母に対し、親権喪失の理由として「著しい不行跡」が認定されている事例が複数存在した。実父の親権喪失の背景に禁治産宣告や強制隠居(事実上の廃戸主)などの事実が認定されている事例も確認できた。なお、明治23年以前の判決原本を対象とした国際日本文化研究センターの民事判決原本データベースにも明治24年以降の判決が存在することを確認し、実母の財産管理権を尊重する事例などを確認できた。また福岡地裁福島区裁判所の『明治35年中隠居、廃家、子ノ懲戒、家督相続人及ヒ親族会二関スル件』と題する簿冊も収集したが、編綴された判決のほとんどが親族会召集に関する事例であった。
第二に、広く「親権」に関する研究を深めるため、比較家族史学会にて「<産みの親>と<育ての親>の比較家族史①」と題するシンポジウムを企画運営し、2021年10月に学会を開催した。2022年6月にも継続して同テーマを拡大して開催するにあたり、プレシンポジウムを3回開催した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K01265
- 体系的課題番号 : JP20K01265