共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2024年3月

中国の影響力メカニズムの比較政治学的研究―「恵台政策」を中心に

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K01460
体系的課題番号
JP20K01460
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

本研究の目的は、中国の習近平政権による「恵台政策」を取り上げ、台湾に対する利益誘導型の影響力行使の効果を分析し、中国による経済的手段を用いた影響力行使の可能性と限界を明らかにすることにある。本年度の研究実施計画では、中国での台湾の若者の就業・起業への優遇措置に関する調査・分析を予定していた。しかし、本年度もまた昨年度と同様に新型コロナウイルス感染拡大の影響により、現地調査は実施できず、インターネットや国立国会図書館関西館を利用した文献調査のみとなった。当初計画の大幅な変更を余儀なくされたことから、前政権である胡錦濤政権の恵台政策との比較分析を念頭に、台湾への中国人観光客の送り出しの事例を考察した。
研究成果の具体的内容については、中国人観光客の送り出しを「利益供与型」のエコノミック・ステイトクラフトと捉えて、それを通じた中国による影響力行使のメカニズムをクライアンテリズムの視点から分析し、中台間にまたがる「両岸クライアンテリズム」がいかに機能したかを考察した。当該事例では「両岸クライアンテリズム」を有効に機能させる条件を欠いており、中国が意図した利益分配も、それを政治的な効果につなげるための監視も十分実現できていなかったことが明らかにされた。中国の影響力行使のあり方に限界が存在したことは、中国が所期の政治的な目的を実現できなかった背景のひとつだったといえる。
研究成果の意義として、第1に、中国の影響力行使を制約した要因として、これまで指摘された中国国家の一体性の欠如、市場メカニズムなどに加えて、台湾における民主的な政治体制の存在を指摘したことがあげられる。第2に、国境を越えたエコノミック・ステイトクラフトの実施は、現地協力者の存在が重要かつ有効だが、その利害が中国の目指す目的と合致しない場合にはエコノミック・ステイトクラフトの効果が限定的となることが示された。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K01460
ID情報
  • 課題番号 : 20K01460
  • 体系的課題番号 : JP20K01460