2019年10月 - 2025年3月
高齢者白血病幹細胞の排除を目的とした治療標的遺伝子同定のための国際共同研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
本国際共同研究では、single cell RNA-seqの先端解析技術を軸とした複数の先端技術を統合し、現在、米国MD Anderson Cancer Centerにおいて急性骨髄性白血病(AML)症例を対象として臨床試験が行われている「抗アポトーシス因子BCL-2とDNAメチル基転移酵素の同時阻害」治療前後の白血病細胞の精密なプロファイリングを実施し、これによって治療効果を予測・評価するバイオマーカーを特定することを目標とする。選択的BCL-2阻害剤であるVenetoclaxとDNAメチル基転移酵素(DNMT)阻害剤Decitabineの併用治療効果は、初発(ND)AML患者で高い有効性を示し、再発/難治性(R/R)AMLでは奏効率が低くなるが、その要因はあきらかではない。当該年度の研究では、同臨床研究を目的として採取された治療後再発患者の治療前後のサンプルを用いてRNA-seq解析とmethylation assayを実施して、DNAメチル基転移酵素阻害剤の標的遺伝子の解析を進めた。特にエピジェネティックな経路を介したインターフェロン応答の誘導に注目してインターフェロン誘導遺伝子(ISG)に焦点を当て、ISGのRNA発現とプロモーターおよびエンハンサー領域のCpG部位のメチル化レベルについて解析した。その結果、ND AMLでは、治療抵抗性群でアミノ酸代謝や細胞移動/接着に関連する遺伝子の発現が亢進し、R/R AMLでは、治療抵抗性群でISG発現が有意に低下していた。また、長期寛解達成群と再発/治療不応群の治療前の遺伝子発現においてISG発現レベルとこれに随伴するDNAメチル化レベルに特徴的な相違があることがわかった。これらの知見は、治療後の腫瘍細胞の生存に免疫応答を含む微小環境との相互作用がエピジェネティックな修飾とともに関与していることを示唆するものと考えられた。
- ID情報
-
- 課題番号 : 19KK0221
- 体系的課題番号 : JP19KK0221