局所コンパクト空間における正則なボレル測度にラドンの名を冠したのは、ブルバキあたりであろうか。ラドンさんがしたことはそういったことではないのだが。
コンパクト距離空間の上の連続関数環を考え、その上の正(線型)汎関数が測度で表わされることを示したのがバナッハであった。
その方法は、ダニエルのそれとよく似ているのだが、汎関数の連続性の扱い(仮定)が異なっていて、積分を拡張する際にバナッハ自身による関数解析の定理を援用するもので、それがため、距離空間の仮定を外せない、ということだったと理解している。この距離空間という仮定を取り除いたのがマルコフであり角谷ではあった。
ちなみにユークリッド空間の有界閉集合の場合を示したのがラドン。
ブルバキとダニエルとの関係がよく分からないのだが、こと積分に関していうと、連続関数の積分を拡張した先駆者の一人として見ていない風がある。
いずれにせよ、局所コンパクト空間に肩入れするあまり、ダニエル積分の汎用性を見えにくくした罪なきにしも非ず。
ダニエル積分に位相が不可欠であるといった印象をもつ人も多いようで、
「ルベーグ積分を手っ取り早く手に入れるだけでは、その後に続く抽象的な積分の際に改めて測度から学び直す必要があり、結局は二度手間である」、といった誤解を広めるのに一役買っているような。ブルバキは知らず、ダニエル積分に限ってはそういう欠点はない。
他に、関数の方が集合よりも難しいという誤解であろうか。どちらも基本的には違いないが、個人的な感覚は集合よりも関数の方が便利というもの。集合は素朴で関数は高度というのは皮相的であるような。
半年以上にわたって縷々連ねてきたのであるが、空にあずけし柿一つ、そろそろお終いにしよう。
生きていたら、そして気が向いたらまたということで。