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タイトル 訂正と改良
概要

「ルベーグ積分と測度」のサポート情報です。

更新日 2022-10-15 04:30:49
作成日 2022-02-22 09:31:59
タイトル 測の細道始末記
概要

「ルベーグ積分と測度」の補足・関連情報。

更新日 2022-04-25 07:53:13
作成日 2022-01-16 07:08:33
ブログ

杖のあとさき

ラドン測度雑感

局所コンパクト空間における正則なボレル測度にラドンの名を冠したのは、ブルバキあたりであろうか。ラドンさんがしたことはそういったことではないのだが。
コンパクト距離空間の上の連続関数環を考え、その上の正(線型)汎関数が測度で表わされることを示したのがバナッハであった。
その方法は、ダニエルのそれとよく似ているのだが、汎関数の連続性の扱い(仮定)が異なっていて、積分を拡張する際にバナッハ自身による関数解析の定理を援用するもので、それがため、距離空間の仮定を外せない、ということだったと理解している。この距離空間という仮定を取り除いたのがマルコフであり角谷ではあった。
ちなみにユークリッド空間の有界閉集合の場合を示したのがラドン。
ブルバキとダニエルとの関係がよく分からないのだが、こと積分に関していうと、連続関数の積分を拡張した先駆者の一人として見ていない風がある。
いずれにせよ、局所コンパクト空間に肩入れするあまり、ダニエル積分の汎用性を見えにくくした罪なきにしも非ず。
ダニエル積分に位相が不可欠であるといった印象をもつ人も多いようで、
「ルベーグ積分を手っ取り早く手に入れるだけでは、その後に続く抽象的な積分の際に改めて測度から学び直す必要があり、結局は二度手間である」、といった誤解を広めるのに一役買っているような。ブルバキは知らず、ダニエル積分に限ってはそういう欠点はない。
他に、関数の方が集合よりも難しいという誤解であろうか。どちらも基本的には違いないが、個人的な感覚は集合よりも関数の方が便利というもの。集合は素朴で関数は高度というのは皮相的であるような。

半年以上にわたって縷々連ねてきたのであるが、空にあずけし柿一つ、そろそろお終いにしよう。
生きていたら、そして気が向いたらまたということで。

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移送原理再び

もともと、transfer principle と呼んでいたものの訳のつもりが、不覚にも同音異義語、位相原理と区別がつかない。
いまさらで、誰も気にしないとは思うが、「移しかえ原理」への呼び改めをお願いします。

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普遍 $L^p$ 空間

この巨大なバナッハ空間のことをなぜ誰も書かないか不思議に思っていた、ということもあり入れてみました。
まあ、実質的に普通の $L^p$ 空間と Radon-Nikodym 密度(関数)の組み合わせで済む話なので、敢えていうまでもなく、ということかも知れないが、適切な記号というものは概念と同じくらい重要なはずで、微積分がニュートンの記号のままであったら、今のように普及していたかどうか。
いずれにせよ、測度の相互比較を行い記述する上で便利な記号としての測度のべき乗である。こういった考え方は von Neumann に由来するもののようであるが、記号そのものは別立てかも知れない。それを受け継いだ角谷の論文でも別の記法が使われているので。
ここでは8章で出てくる二分律の説明に使える程度にささやかに書いておいたのだが、このことは記号も含めて非可換 $L^p$ のはるか彼方まで一般化可能ではある、といったことはバトンの受け手の現れることを信じて別のどこかに。

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もし授業で使うとしたら

仮に半年の授業で使うとしたらどういう感じになるか書いてみると、
1章:総和、連続関数の多重積分をくり返し積分も込めて復習、ディニの定理(2回)
2章:dagger が付いていないところだけ(4回)
3章:これも dagger なしだけを、sigma-finite に限定して(4回)
4章:同じく dagger のないところだけ(2回)
これで12回なので、残り3−4回を演習+試験で、十分賄えるはずである。
私自身はもはやその機会がないのであるが、試してみたいという奇特な方がおられたなら、ご一報ください。
以前書いたダイジェスト版を提供できるかも知れません。

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くり返し積分

重積分の歴史的なことがどうなっているのか気にはなっていたのだが、未だ分からず仕舞い。
どこまでさかのぼれるものかは知らねど、Euler-Lagrange の時代には、くり返し積分計算・変数変換の密度関数による補正も認識されていたらしい。
このある意味素朴とも思える積分計算法をフビニの定理と称するのは、牛刀使いのようでもあり。
ともかく、ルベーグ積分(だけでなくリーマン積分でも)におけるくり返し積分の歴史というのも、いろいろ入り組んでいるようである。
有界集合上の有界可測関数の場合をルベーグが示し、それを一般の場合に拡張したのが Fubini であるといった理解で長年いたのだが、それはどうやら正しくはなく、ルベーグが示したのは、リーマン積分で成り立つダルブーの上下積分に関する主張に近いものだったらしい。
そもそもの定式化をどうすべきかが問題であった。具体的には、積分をほとんど至るところの情報だけで記述できるし、そのように記述する必要があるという認識の部分。
わかってしまえば、その正当化は時の勢いという感じのものではあるが、その正しい見方を最初に示したのが単調収束定理の Levi であった由。
ただ、それを証明という形で最初に確かめたのが Fubini であったので、フビニの定理。ではよく耳にするトネリさんは何をしたかというと、Fubini の定理の証明にあった不備に修正を加えたか別証明を与えた、ということのようです。両者の原論文に当たって調べられればよいのだが、これがイタリア語の古い雑誌ということで、入手困難につき、未だ確かめられずにいる。
何はともあれ、くり返し積分。
これは積分の分解 (disintegration) とのからみもあり、直積の形である必要は全く無いので、単純にパラメータつき積分をパラメータについて積分を施す、という形で書いてみたのが、4章の中身。
積分幾何のラドン変換を例として紛れさせておいたのは、ちょっとしたご愛嬌、深い意味はありません。
Crofton の公式でもよかったのだが、こちらは、状況設定が少し面倒でもあり、取りやめに。
測度記号を使う体裁上、本では3章の後に据えたのであるが、純粋に積分(と零集合)の言葉だけで記述することも可能で、2章の次に4章の積分版をやって、
その後で測度がらみをまとめて記述する、ということも可能ではあった。
そうすると、測度なしでどこまでも、という純粋路線を走ることになり、それはそれで面白いとは思うものの(興味があったらやってみて下さい)、積分と測度を遊離させかねないこともあり、「測積不岐」の方針から取りやめた。

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測積不岐

水戸の弘道館の由来を記した碑文の中に「文武不岐」という言葉があり、とくに剣道関係者に好まれているようだが、似た言葉に「文武両道」というのがある。
この二つは似て非なるもので、両道の方は別の2つという認識である一方で不岐の方は一体感を表している。
これを測度と積分に当てはめて見るに、「測積両道」の立場と「測積不岐」の立場があり、世間的には両道支持者が大勢かと思われるが、個人的には一体のものという感が強く、それを意識した積測積と測積測ではあった。

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異体字

分割には違いないので、変域分割も値域分割も同じ文字で表してよかったのであるが、混乱を避けるために、range を連想する rho を使っていたところ、今度は正数を表わす場合と重なることに気づき、rho の異体字 (variant character) に変えておいた。TeX だと \varrho で出力される。
ということで、もしかしたら rho と varrho の取り違いが残っているかも知れません。

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段々近似

可測関数が単純関数で一様近似されることは、関数の値の範囲を分割してみれば(いわゆる横割り)一目でわかることではあるが、この値域分割による近似になぜか名前がついていないようで、それをここでは段々近似 (level approximation) と呼ぶ。段々畑のイメージで。
その際に不思議なことは、値域の分割を半々で行う(二進分割)のが専らであること。(「解析概論」では十進分割でした。)
正関数に対する近似を単調増加列にするためであろうが、特殊な取り方が分かりやすいということもなさそうであり、分割そのものはリーマン積分で経験済みということもあり、一般的な分割とその細分割という形で述べておいた。
因みに、値の逆像で変域を区切って関数を調べるのが一般性のある方法で、等高線とか等位面 (level set) という形でも馴染みあるものではあるが、陰関数は述べてもなぜかこのことに触れぬ(日本での)微積分の教科書の多さよ。これも不思議なことではある。

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測度の完備化

測度の完備化が本質的に必要なのは確率論の技術的な領域に属するもののようであるが、一方で隙間を埋めればよいというものでもないのは lifting がらみでも実感されるところである。
本では、概念的に別物であることを強調するため距離空間の完備と測度の完備は無関係である旨書いておいたのだが、そうは言っても「隙間が埋まっている」という一般的な意味において、両者にはつながりはもちろんある。他に単調完備というのもあって、下手に説明しだすと混乱すると思い敢えて書かなかったのだが、測籍対応との関係をここで補っておこう。
まず、積分のダニエル拡張というのは、その作り方から無視可能な関数をすべて含み「測度の完備化」に相当する内容を併せ持っている。ということで、出てくる測度は最大・最小問わず完備である。
逆に測度(測度前でよい)から出発して、単純関数の積分のダニエル拡張を行うと、これは完備化した測度に伴うダニエル拡張とも一致する。
一方、「測度の完備化」相当を行わず、積分の収束定理が保証されるように最小限の拡張を行ったものが単調完備化である。
したがって、通常のダニエル拡張と単調完備化の違いは零関数だけであるというのが、測籍対応の要点ではあった。3章と7章にまたがるものではあるが。
なお、Loomis では、ダニエル拡張のすぐ後で単調完備化の話に移行し、測度も積分もそれに限定しての扱いとし、
実際、それでハール測度も含めた調和解析の一般論は賄えるものであることが示されている。

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