2018年6月 - 2021年3月
生体系模倣分子性物質におけるプロトン揺動-電荷移動増強と確率共鳴的信号伝達
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
本研究は,分子内プロトンダイナミクスと結合・連動するパイ電子系電荷ダイナミクスが顕著に発現する強相関電子系分子性物質に対して,伝導ノイズの検出と発生機構の解明,さらに外部ノイズ印加による信号伝達機構の解明と伝達信号増強を試みるものである.本年度は,対象物質群が特徴的に有するプロトンダイナミクスと連動するパイ電子系電荷ダイナミクスが現れる低周波数誘電率測定を行い,日本物理学会などで発表した.
パイ電子系を構成するドナー分子を異なる分子で置換すると分子間プロトン結合およびパイ軌道結合のそれぞれの強度をコントロールでき,誘電応答,特に低温でのプロトン量子トンネルと結合した量子常誘電応答がドナー分子の選択により大きく変化することが明らかになった.この結果は,プロトン運動とパイ電子系の結合強度の変化により誘電応答,ノイズ発生の起源となる電荷ダイナミクスが変化することを示しており,プロトン運動-強相関パイ電子系ダイナミクスの連動が明らかになった.
また,既存のノイズ測定系の改良を行うために海外共同研究者であるゲーテ大学フランクフルト(ドイツ)のJens Mueller教授と装置改良についての議論をメール,スカイプなどで行った.これまでの保有技術では絶縁体転移後の高電気抵抗状態におけるノイズ測定が困難であるため,この課題克服に向けた検討を開始した.
本研究を実施する過程で,プロトン運動をより直接的に観測・評価する重要性を認識し,新たに非弾性中性子散乱実験の実施について専門家と検討を開始した.単結晶試料サイズが中性子散乱実験に対しては十分ではないが試験的に測定を行った.その結果,結晶方位を揃えた複数の単結晶試料(約10mg以下)を準備することでフォノンスペクトルの観測が可能であることを検証することができた.
パイ電子系を構成するドナー分子を異なる分子で置換すると分子間プロトン結合およびパイ軌道結合のそれぞれの強度をコントロールでき,誘電応答,特に低温でのプロトン量子トンネルと結合した量子常誘電応答がドナー分子の選択により大きく変化することが明らかになった.この結果は,プロトン運動とパイ電子系の結合強度の変化により誘電応答,ノイズ発生の起源となる電荷ダイナミクスが変化することを示しており,プロトン運動-強相関パイ電子系ダイナミクスの連動が明らかになった.
また,既存のノイズ測定系の改良を行うために海外共同研究者であるゲーテ大学フランクフルト(ドイツ)のJens Mueller教授と装置改良についての議論をメール,スカイプなどで行った.これまでの保有技術では絶縁体転移後の高電気抵抗状態におけるノイズ測定が困難であるため,この課題克服に向けた検討を開始した.
本研究を実施する過程で,プロトン運動をより直接的に観測・評価する重要性を認識し,新たに非弾性中性子散乱実験の実施について専門家と検討を開始した.単結晶試料サイズが中性子散乱実験に対しては十分ではないが試験的に測定を行った.その結果,結晶方位を揃えた複数の単結晶試料(約10mg以下)を準備することでフォノンスペクトルの観測が可能であることを検証することができた.
- ID情報
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- 課題番号 : 18K18725
- 体系的課題番号 : JP18K18725