2020年8月 - 2025年3月
光エネルギーの高度活用に向けた分子システム化技術の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
本研究は、分子設計と分子組織化に基づき励起三重項状態の光緩和過程を操る「分子システム」を合理的に設計するための方法論を開発することを目的とする。光機能性分子の自己組織化と、高精度電子相関理論、超高速分光ならびにナノプラズモニクスとの分野融合に基づいて、近赤外~紫外光領域における分子組織化TTA-UCシステムを構築する。本年度は、可視(Vis)領域内、近赤外(NIR)-紫外(UV)光領域において、大気下で駆動する分子組織化TTA-UC高分子フィルムの設計ならびに作製技術の開発を進めた。3つのアプローチで、酸素下でアップコンバージョン(TTA-UC)を示す固体フィルムの作製技術を探索した。まず第一は、酸素透過性の低いポリビニルアルコール(PVA)をマトリックスとし、PVA中に近赤外領域に吸収を持つ三重項増感剤(ドナー)を発光体(アクセプター)のナノ粒子に内包させることにより、アクセプター(アモルファス固体)中における三重項エネルギー移動とエネルギーマイグレーションを利用することが可能となった。第二は、タンパク質ゼラチンをマトリックスとするもので、中性界面活性剤(TX-100、液体)がゼラチンフィルム中でナノサイズの液体ドメインを形成し、ドナー、アクセプター分子がこのナノ液滴中で分子拡散機構によるTTA-UCを示す複合フィルムの開発である。第三は、酸素バリア能が高く、産業的に応用されているエポキシ樹脂フィルム中にドナーとアクセプターを高密度かつ均一に溶解する技術の開発である。これらのアプローチにおいても、従来溶液系が主であったTTA-UCの研究から固体フィルム系へのパラダイムシフトを誘起する成果が得られている。
- ID情報
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- 課題番号 : 20H05676
- 体系的課題番号 : JP20H05676