共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

外傷歯における神経伝達シグナルと人為的血流調節による歯髄静的幹細胞賦活化の試み

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K10224
体系的課題番号
JP20K10224
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

小児の歯の完全脱臼における第一選択は再植だが,歯根完成歯では再植後の歯髄再生は期待できず,長期保存の保証はない.我々はこれまで,マウスの歯を再植前に歯根短縮術を施すと,歯髄内に早期の血行回復がおこり,歯髄静的幹細胞の活性化を促すことを明らかにした.しかし,歯根短縮術は根尖部歯髄に存在する幹細胞群SCAPを失うこと,また歯根が短いことは歯の長期予後を悪化させることから,歯根短縮術を行わずに,早期の血行回復と歯髄幹細胞の賦活化を惹起する方法として以下の実験を考案し,実施した.
①再植時の髄床底部への意図的穿孔形成
深麻酔下で3週齢マウス上顎右側第一臼歯を抜去後,髄床底に直径0.5mmのカーバイドバーで穿孔形成し,抜歯窩に再植した.術後3日~8週まで継時的にマウスを麻酔下で灌流固定し,歯髄治癒過程を解析した.その結果,対照群に比較し,実験群では穿孔部から早期の血行回復が起こり,術後3~5日の歯髄内アポトーシスの減少と細胞増殖活性の増加を促進し,術後2週の実験群の再植歯遠心根でNestin陽性率が有意に増加し,歯冠部の第三象牙質形成が増加した.従って,髄床底部への意図的穿孔形成が髄床底部からの早期の血行回復を促し,歯髄静的幹細胞を賦活し,歯の再植後の歯髄治癒を促進することが示唆された.しかし,今回の実験では髄床底穿孔部での骨形成・アンキローキスが惹起され,7日後のマラッセの上皮遺残の有意な減少を伴った.
②再植歯のβ3アドレナリン受容体作動薬溶液への浸漬
Hanks液にイソプロテレノールを5~20%の濃度で添加した溶液に,抜去歯を5分間浸漬後に再植し,2週後の治癒過程を解析した.その結果,有意差はないものの,Hanks液のみの対照群に比較して,10%実験群でNestin陽性率が高い傾向がみられた.すなわち,歯髄治癒が促進する可能性が示唆された。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K10224
ID情報
  • 課題番号 : 20K10224
  • 体系的課題番号 : JP20K10224