その他

1998年4月 - 1998年4月

加速進化によるタンパク質機能の多様化とその機構


マアナゴ体表粘液由来の2種のガレクチン、コンジェリンI及びII(Con IおよびCon II)は、アミノ酸配列において48%の相同性を有するが、糖鎖結合特異性およびpH依存性、温度安定性などが異なる。cDNA塩基配列の分子進化学的解析から、これらは加速的な塩基置換(KA/KS=2.7)により異なる機能・特性を獲得してきたことを明らかにした。今回Con IおよびCon IIのラクトース複合体(1.5A)の結晶構造を解析したところ、Con IIは他のホモ2量体ガレクチンに近い構造であるのに対して、Con Iでは2量体界面付近の1組のストランドがサブユニット間で交差したストランド-スワップにより、糖鎖架橋形成に必須の4次構造を安定化していた。ガレクチンcDNAの系統樹解析により特にCon Iが加速的置換により、体表粘膜が直接接している外部環境で機能できる分子へと適応進化したと考えられた。また、X線構造解析および合成糖鎖高分子を用いた阻害試験から、特にCon IIは付加的な結合ポケットが存在し、大腸菌O157ベロ毒素リガンドであるGb3に強い特異性を示すことも判明した。Con IとCon IIの加速的に置換しているアミノ酸残基についてタンパク質工学的に相互に置換した変異体を調製し、耐熱性や糖鎖認識の変化が見られたことから加速進化による機能変化を確認した。
さらに、棲息環境の異なるウナギ目魚類として、深海3000mに棲息するホラアナゴとサンゴ礁海域に棲息するアラシウツボおよびゴマウツボからのガレクチンcDNAのクローニングを試みた。ウツボ体表粘液中からレクチンを単離し、1次構造を解析した。その結果主なレクチンはC型レクチンであり、鯉やニジマスの肝臓, 白血球由来C型レクチンと相同性を示した。ガレクチンだけでなくC型レクチンも存在し、より多様性を示すことが明らかになった。