共同研究・競争的資金等の研究課題

2000年4月 - 2003年3月

『粒界のミクロ制御によるバリスタ型環境ガスセンサの設計』

文部科学省  科学研究費補助金「基盤研究(B)(2)一般」  基盤研究(B)

課題番号
12450270
体系的課題番号
JP12450270
担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

本研究では、下記の項目について検討し、それぞれ次のような成果を得た。
1.SnO_2-Cr_2O_3系バリスタ素子のNO_xガス検出特性と粒界の微細構造
SnO_2-5Cr_2O_3素子がNO_2よりも高いNOガス感度を示す理由を明らかにするために、SnO_2-Cr_2O系素子の空気中およびNO_x中でのブレークダウン電圧および微細構造の変化を調べた。Cr_2O_3添加量が5.0wt%までは、SnO_2-SnO_2粒界数の増加により、NOおよびNO_2ガス感度が共に増加し、特に、粒界での微小なp-n接合がNOの化学吸着を高温まで安定化させるために、NO_2ガス感度よりもNOガス感度が高くなったと考えられた。
2.転写印刷法で作製したSnO_2-Cr_2O_3系厚膜型センサのNO_xガス検出特性
SnO_2-Cr_2O_3系試料粉末から転写印刷法で厚膜型センサ素子を作製し、その半導体型ガスセンサとしてのNO_xガス検出特性とセンサ材料のゼータ電位との関係を測定した。SnO_2-Cr_2O_3系試料は、半導体ガスセンサとしてはNO_2ガス感度よりも高いNOガス感度は示さず、バリスタ型センサとしてのみ特異的に高いNOガス感度を示した。なお、SnO_2-Cr_2O_3系試料のゼータ電位は、Cr_2O_3の添加量が0〜1.0wt%の範囲で、-12mV付近から+12mV付近へ急激に変化した。したがって、SnO_2表面がNO_2感応部(NO_2の吸着サイト)として、また、ヘテロ界面であるp-n接合部がNO感応部(NOの吸着サイト)として、それぞれ機能していると考えられた。
3.高感度SO_2ガスセンサ材料の探索とガス検知機構の解明
内部に電極を有する厚膜型センサとしての各種酸化物半導体のSO_2ガス検出特性を調べた。検討した酸化物半導体材料の中では、WO_3が作動温度400℃で最も高いガス感度を示した。各種貴金属の担持効果を測定したところ、WO_3への1.0wt%のAgの担持(1.0Ag/WO_3)により最も高いSO_2ガス感度を示した。担持Agによる増感効果を検討した結果、1.0Ag/WO_3素子のSO_2ガス中での抵抗変化は、担持Ag表面の2個の化学吸着酸素O^<2->adとSO_2ガスとの反応でSO_4^<2->吸着種が形成されるために引き起こされることが示唆された。
4.Pd電極を取り付けた陽極酸化TiO_2膜を用いたダイオード型H_2ガスセンサ
電極界面のセンサ材料の細孔構造を制御して高感度化を図る一つの方法として、陽極酸化法によるTiO_2薄膜の調製とH_2ガスセンサへの応用を検討した。この陽極酸化TiO_2膜の表面にスパッタリング法によりPd電極を取り付けたセンサ(Pd/TiO_2/Tiの電極構成)は、空気中およびN_2雰囲気中でダイオード型の電流-電圧特性を示した。また、このセンサに一定の順または逆バイアス電圧を印加した状態での電流値は、空気中またはN_2中のH_2濃度に応じて可逆的に増加するという応答を示し、N_2中でより高い応答感度を示した。この素子はH_2のPd表面でのH原子への解離とこのH原子によるPd/TiO_2界面の電位障壁の変化によって応答していると考えられ、今後、酸素を含まない特殊環境下での高感度H_2ガスセンサ等への応用が期待される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-12450270
ID情報
  • 課題番号 : 12450270
  • 体系的課題番号 : JP12450270