2021年5月
早期発症者と長期潜伏後発症者より分離した結核菌北京株のゲノム変異解析
結核
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- 巻
- 96
- 号
- 3
- 開始ページ
- 83
- 終了ページ
- 86
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)日本結核・非結核性抗酸菌症学会
[目的]全ゲノム解析を用いて,早期発症者と長期潜伏後発症者から分離した結核菌北京株のゲノム変異を解析した。[方法]1999年に中学校で発生した結核集団感染の接触者と二次感染者のうち2009年までに結核を発症した患者より分離した結核菌北京株6株と,別の事例で初発時と再発時の患者より分離した結核菌北京株2株の計8株の全ゲノム解析を行った。結核菌の突然変異率は,初発から1年以内に発症した早期発症者と1年以上の潜伏期を経てから発症または再燃した長期潜伏後発症者の2群間で比較した。[結果]結核菌北京株の突然変異率は,Lineage 4に属する結核菌よりも高く,結核菌北京株の高い病原性や薬剤耐性の要因である可能性が示唆された。遺伝子多型解析では,酸化的損傷に起因すると推定されている突然変異が長期潜伏後発症群のほうに多く,潜伏期間中にも薬剤耐性変異が起こる可能性が示唆された。[結論]結核菌北京株の高頻度の薬剤耐性化を防ぐためには,感染した結核菌の系統により治療法を検討する必要性も考えられた。今後,結核菌系統の特性を理解し,治療法を工夫することで結核の薬剤耐性化や重篤化を防ぐ有効な対策の構築につながることが期待される。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0022-9776
- eISSN : 1884-2410
- 医中誌Web ID : 2021270684