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2014年4月 - 2014年4月

食塩ナノ結晶の吸湿反応過程の研究


食塩に代表されるアルカリハライドの超微粒子をさらに小さく分割していくと、最終的にはアルカリ金属原子Mとハロゲン原子Xがそれぞれ数個からなる「マイクロクラスター」と呼ばれる領域に達する。従来の質量分析法による研究から、これらのクラスターはM+とX-から構成され、バルクの結晶構造を保った構造をとることが知られている。このために、アルカリハライドの「クラスター」は「ナノ結晶」と呼ばれることもある。例えばカチオンクラスターNa14Cl13+, Na23Cl22+, Na32Cl31+はそれぞれ各辺の原子数が(3×3×3), (3×3×5), (3×3×7) となる直方体構造をとって安定に存在する。さらに最近の研究からこれらよりMXが一分子分だけ少ないクラスターではバスケット型構造をとっており、アンモニアなどの極性分子がその内部に吸着されやすいという報告もある。本研究では、真空中でこれらのナノ結晶を気相水分子と衝突させて質量分析法によりその吸着反応性を調べる。さらに理論計算を併用して、その反応活性サイトを明らかにする。これによってナノ結晶と水分子との相互作用を分子レベルで明らかにし、その溶解・潮解過程を解明する。申請者らの予備的な観測では、特にバスケット構造での水分子吸着反応には、アルカリ原子・ハロゲン原子による反応性の違いが現れている。このため本研究の結果として、将来的には(1)比較的潮解性の小さい塩結晶表面の開発、(2)バスケット型構造への分子吸着性を利用することによる塩化ナトリウムとそれ以外のアルカリハライドとの分離、につながる基礎的知見を得ることを目指す。