共同研究・競争的資金等の研究課題

1995年 - 1995年

キラルβ-ラクタム合成の新手法

日本学術振興会  科学研究費助成事業 国際学術研究  国際学術研究

課題番号
07044305
体系的課題番号
JP07044305

カルバペネム系抗生物質は、優れた抗菌力を持つチエナマイシンの発見以来、次世代のβラクタム系抗生物質として注目されている。チエナマイシンはその医薬品化に配合剤が必要とされたが、近年発見された1β-メチルカルバペネムは強い化学的および生物的安定性を持ち、配合剤を用いない形での単独での医薬品化が期待されている。しかし、この1β-メチルカルバペネムは微生物により産生されるものではなく、化学的に合成しなければならず、工業的に大量生産するための効率のよい新規合成法の開発が望まれている。本申請者はこれまでに、光学活性な窒素求核剤の共役エステルへの共役付加とアルドール反応とを組み合わせた三成分連結法について研究を行っており、この合成法を用いチエナマイシンの合成前駆体の不斉合成に成功している。今回、この三成分連結法を用い、四つの連続した不斉点を有する1β-メチルカルバペネムの不斉合成について検討した。
初めに、γ位にメチル基を有するα,β-不飽和エステル2を用い、その不斉点による不斉誘導を行った。その結果、トランス体のβアミノエステルを立体選択的に得ることに成功した。しかし、その反応では目的とするシス体のβアミノエステル3を、満足できる立体選択性で得ることはできなかった。
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そこで次に、光学活性リチウムアミド1を用いて不斉誘導を行った。その結果、反応は非常に高い立体選択性で進行し、高収率でβアミノエステル3を単一生成物として得ることができた。また、この反応では、出発のα,β-不飽和エステル2のジオメトリーに関係なく、E体、Z体のいずれからも同様の立体選択性で3が得られた。
次に3からリチウムエノラートを発生させアセトアルデヒドとアルドール反応を行った。種々の添加剤を検討した結果、二塩化エチルアルミニウムを用いたときに最も高い立体選択性で、1β-メチルカルバペネム合成に必要な四つの不斉点を持つアルドール体4を得ることが出来た。さらに4を数ステップの反応により1β-メチルカルバペネムの合成中間体として知られるβ-ラクタム5へと誘導することに成功した。
光学活性リチウムアミド1の共役付加とそれに続くアルドール反応とを組み合わせた三成分連結法を用いることにより、βラクタム系抗生物質である1β-メチルカルバペネム高効率合成法の開発に成功した。
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リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-07044305
ID情報
  • 課題番号 : 07044305
  • 体系的課題番号 : JP07044305