基本情報

所属
京都大学 福井謙一記念研究センター リサーチダイレクター
学位
博士(工学)(1974年5月 京都大学)

連絡先
hirao.kimihiko.2nkyoto-u.ac.jp
J-GLOBAL ID
200901016110412128

理論化学は化学現象の説明や解釈にとどまらず、進んで化学研究にたいして方法論的に寄与すべきである。理論研究は実験研究が難しい問題や観測にかからない問題にも容易に焦点を当てることができる。現象を量子論にもとづき統一的に解明することもできる。理論計算に含まれる数学上の困難と、化学という学問が対象にする高次元の複雑性とによって、この要望を満たすことは容易ではなかった。ある有限規模の計算の可能性のなかで、どうしたら化学的精度を得るかというのが私たち理論化学者の問題であった。私たちは物理学者とは異なるセンスで、しかし同じような細心さで内容を分析し、理論を作り上げてきた。時代はあきらかに変わった。分子理論と計算方法の目ざましい発展とコンピュータの進歩により、かってとは比較にならないほど複雑な系の性質を高い信頼度で予測することができるようになった。研究対象にできる現象や系は大きく拡がり、新たな可能性がひらかれつつある。

私自身は(1) Ab initio分子軌道法の開発、電子相関理論(SCF法、SAC法、MRMP法)(2) 密度汎関数法の開発(Long-range Corrected (LC) 汎関数)、(3)相対論的分子軌道法の開発(2成分、4成分相対論的分子理論)に興味を持って研究を進めている。いつも波動関数理論の立場から密度汎関数法を見つめてきた。

最近、Slater’s Transition State Theoryを拡張し、分子の2つの状態間エネルギーを軌道エネルギーで正確に予測する新しい理論を開発した

 An Improved Slater’s Transition State Approximation by Kimihiko.Hirao, Takahito Nakajima, Bun Chan, J.Chem.Phys. 2021 155   in press.

この理論は、2つの状態間のエネルギーは軌道の部分的占有数ni を変数とする連続関数であり、かつエネルギーEを軌道の占有数 ni で微分すると軌道エネルギーになるというJanakの定理に基づいている。簡潔な概念であり、軌道理論の理解に有用である。またDFT KS法では汎関数の改善、開発に利用できる。



被引用数 24,709  h指標 74  i指標 314 (2021 July Google Scholar)




私の経歴
京都大学(学生、大学院生)、アルバータ大学(博士研究員)、滋賀医科大学助手 ( ~1979)
名古屋大学教養部助手、講師、助教授、教授(1980~1993)
東京大学工学系研究科教授 (1993~2009)
神戸理化学研究所計算科学研究機構長(2009~2018)
神戸理化学研究所顧問、京都大学福井謙一記念研究センターリサーチダイレクター(2018~現在)

京都大学、アルバータ大学、滋賀医科大学時代
大学紛争時代に重なるが、素晴らしい師や先輩、(故)加藤博史先生、中辻博先生と出会い、愛情あふれる指導を受け、その後の進む道が決まった。

カナダEdmontonの1年間(1978-1979)は私にいろいろなことを教えてくれた。充実した幸せな時間であった。カナダには人間たちの小さなドラマなどには見向きもしない大自然があった。そしてカナディアン・ロッキーの美しい自然以上にすばらしい人々と出会った。藤永茂先生との出会いは一生の宝ものであった。先生の生き方から「わが身を糾せ」と教えられた。

名古屋大学教養部時代
一般教育を担ってきた教養部が人材育成に果たしてきた役割は大きい。しかし教養部は学部に比べて一段と低い存在として扱われ、一般教育は常に排除の対象とされてきた。自由化、多様化を目的にした大綱化は大学の属性から自由になされたものではない。皮肉なことに、いざ一般教育が排除された現在、一般教育、教養教育の必要性が以前にも増して増大している。今日の大学の研究力低下は大綱化とそれに続く大学の法人化に始まる。

東京大学時代
退職前の数年はともかく、最初の10年間は本当に自由に研究に専念させてくれた。東京大学には感謝している。同僚だった藤嶋昭先生、(故)北澤宏一先生、御園生誠先生、澤田嗣郎先生、・・・・。その笑顔は茶目っ気のこもったやさしさにあふれていて、顔を合わせるだけでこちらの気が引き立てられる思いがした。充実した16年間であった。

神戸理化学研究所時代
計算科学研究機構長。マネージメントの難しさを知らされた。研究所のqualityは研究者のqualityで決まると信じている。組織のマネージメントの原則は個々人が最大の能力を発揮できる環境を整えること。それによって優れた能力、高いモラールと研究に対する情熱を維持することである。組織の活力はいかに多くの"輝いている若手研究者"を抱えるかにかかっており、優れた若手研究者が自由な発想による新しい学問分野の創造に打ち込める安定した環境づくりが組織の長の役割だと考えて組織を運営したつもりである。

理化学研究所計算科学研究機構長退任以降
齢75を過ぎ、残された時間は多くないが、再び、一研究者として科学を楽しんでいる。
「Aun aprendo]

2021年3月に理化学研究所を退職。

現在は京都大学福井謙一記念研究センターのリサーチ・ダイレクターを務めている。


論文

  250

MISC

  113

書籍等出版物

  5

所属学協会

  2

共同研究・競争的資金等の研究課題

  10