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2003年4月 - 2003年4月

細胞内共生成立に働く根粒菌特異的な遺伝子システムの解明


マメ科植物-根粒菌間相互作用を基盤とした新たな有用共生系開発のためには、根粒菌側の共生成立にかかわる遺伝情報の全体像を把握することが肝要である。この点に鑑み、本研究は、知見の乏しい細胞内共生(特にバクテロイド分化)過程に関する根粒菌側の分子機構を解明することを最終目標とする。第I期では、窒素固定や呼吸・エネルギー代謝等に直接関与するものとは別に、細胞内共生特異的に重要なものとして、RpoH(シグマ因子)レギュロン、CtrAを含むHis-Aspリン酸リレー系、といった複数の独立した制御経路がアルファルファ根粒菌S. melilotiで機能していることを示唆する結果を得た。第II期では、前述の遺伝子の詳細な機能解析に加え、更にバクテロイド分化に直接かかわる新規変異株を取得・解析することを通じて、同定される種々の共生必須遺伝子群を細胞内共生過程に働く遺伝子システムとして理解することを第一の目標とする。また、根粒菌の多様性を考慮すると同時に、成果を密接に宿主植物側の研究に生かすことをねらい、モデル宿主植物ミヤコグサの共生菌M. lotiを研究対象に加えている。そこでは、宿主への感染過程や共生窒素固定に必須な代謝経路にかかわるM. loti変異株の取得・解析を通じて、ミヤコグサの系における根粒菌-宿主相互作用の特徴の一端を明らかにすることを目指す。