2021年1月
ビルメンテナンス業に従事する就業高齢者の転倒実態と就業時の易転倒性に関する検討
日本職業・災害医学会会誌
- ,
- 巻
- 69
- 号
- 1
- 開始ページ
- 26
- 終了ページ
- 32
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- 出版者・発行元
- (一社)日本職業・災害医学会
【目的】職域における転倒災害の実態や要因は未だ不明瞭な部分が多い。今回、60歳以上の労働災害の被災者が多いビルメンテナンス業の就業時の転倒実態および易転倒性について検討することを目的に調査した。【方法】対象者はビルメンテナンス業に従事する60歳以上の清掃員151名である。調査は自記式ないしは口述式で、基本属性、過去1年以内における就業時および非就業時の転倒状況や就業状況、健康状態を確認した。分析は対象者の概要、就業時および非就業時の転倒実態の解明、就業時転倒者の易転倒性の検討を行った。【結果・考察】転倒率は就業時9.5%(全14名:男性1名、女性13名)、非就業時17.2%(全26名:全員女性)で、平均年齢は就業時転倒者(68.0±5.4歳)、および非就業時転倒者(69.1±5.0歳)、非転倒者(68.8±4.6歳)であった。年齢などを考慮すると、非就業時の転倒率は地域高齢者との有意差はなかったが、就業時転倒はごく限られた時間のなかで発生していたことから、必ずしも少ないとは言い切れない現状がうかがえた。また、就業時転倒者の57.1%は転倒により何らかの受傷をしていた。就業時転倒者の易転倒性については、非就業時転倒(χ2=7.12、p<.05)、就業時不調(χ2=6.83、p<.05)で関係性がみとめられ、非就業時のつまずき(χ2=3.11、p<.1)、就業日の睡眠時間(χ2=2.78、p<.1)、就業後の疲労感(χ2=3.14、p<.1)、作業環境(χ2=3.74、p<.1)では、関連の傾向が確認できた。【結論】就業高齢者の平均就業6時間での転倒率は9.5%であった。就業時転倒者の易転倒性では、日常における転倒やつまずきの経験、睡眠時間の短さや心身の疲労感を含む不調感が転倒の要因である可能性が確認できた。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 1345-2592
- 医中誌Web ID : 2021144786