2000年 - 2002年
近代日本の都市社会構造の総合的研究-都市諸階層の生活実態と社会関係を基軸として-
文部科学省 科学研究費補助金(基盤研究(B)) 基盤研究(B)
広川禎秀「戦後初期の恒藤恭の文化国家および都市論」は法哲学者であり、民主主義者、平和主義者として知られる恒藤恭の、戦後の文化問題に関わる主張を分析した。広川は恒藤の「文化国家」概念や、その具体的内容である「文化都市」の意味を解明し、これらの考え方は近代日本の物質文明偏重に対する深い批判に裏付けられていると指摘した。なお、分析の素材となった大阪市立大学恒藤記念室所蔵「恒藤恭関係資料」の目緑(第2次調査分)を報告書に収録した。塚田孝「近世大坂の都市社会構造」は、木村兼葭堂という文化人の存在を通して、近世都市大坂の構造に迫る試みである。塚田は、兼葭堂が文人社会だけでなく、同時に伝統社会や下層社会とも関わりを持った事実に注目し、これら三つの側面を統一的に把握した。能川泰治「関東大震災後の火災保険問題と「貧民」のデモクラシー」は、震災後の東京をフィールドとする。能川は政府や保険社会の対応を批判し保険金支払いを求める市民運動に注目し、都市下層社会におけるデモクラシー状況を分析した高岡裕之「都市大衆文化と興行資本」は、映画を都市地域社会史の一環として分析するための基礎作業として、昭和戦前期の大阪市に即して統計資料を整理、考証し、映画館の動態分析を行った。中瀬哲史「大阪の機械工業の発展と大阪市電による電力供給」は大阪の機械工業に対する先行研究の評価を整理した上で、その実態を産業集積の歴史的展...
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- 課題番号 : 12410091