基本情報

所属
新潟大学 教育学部 自然情報講座 (名誉教授)
学位
理学博士(1986年3月 東北大学)
理学修士(1983年3月 東北大学)

J-GLOBAL ID
200901040050849171
researchmap会員ID
1000223197

 マラリアはハマダラ蚊が媒介する原虫病で毎年2〜3億人の感染者と60万人の死者を出しています。犠牲者の多くは5歳以下の子どもです(WHO Malaria Report 2024)。マラリアの特効薬であるクロロキン(アルカロイド系薬剤)に耐性を持つ熱帯熱マラリア原虫が地球温暖化の進行とともにその流行域を拡大し,世界中に重篤なマラリア感染症を蔓延させています。そのため耐性マラリア原虫に対して有効な新規抗マラリア剤の開発が切望されています。

 菊科植物のアルテミシアから抽出されるアルテミシニンは,非アルカロイド系の環状過酸化物(O-O結合を有する双環式構造)で耐性マラリア原虫に効果的な薬剤として注目されています。しかし,その化学合成には15段階もの工程が必要とされるため高価な薬剤になっています。また,抗マラリア剤の研究は利益につながらないため新薬の開発が進展しないのが現状です。最近では,特効薬であるアルテミシニンに対しても耐性を持つ熱帯熱マラリア原虫が現れているため新規な抗マラリア剤の開発が急務になっています。 

 当研究室では電子移動反応を有機合成に利用するという立場から,独自に開発した電子移動光酸素化反応の手法を駆使して(O-O 構造と双環式構造を1段階で構築する方法;O-O構造が抗マラリア活性発現の鍵になっています)新規な環状過酸化物を短工程(3〜4段階)で合成することにより,新しい抗マラリア剤の開発を行っています。また,アルテミシニンが抗ガン剤としても利用できることから,新規に合成した環状過酸化物が抗マラリア剤や抗ガン剤として機能することを期待しています。流行を追究することは大事なことですが,一方で身の回りの自然や不易に目を向けることによっても沢山の発見があります。これまで漢方薬として利用されてきたアルテミシアに抗マラリア効果を発見したト・ヨウヨウ氏が2015年にノーベル生理学医学賞を受賞したことは,環状過酸化物の合成やその有効利用を研究している科学者にとって大変明るいニュースでした。

 他方,仕事がら科学教育の方面では長年にわたり小中学校の理科教員の養成を行っています。小中学校で理科を専門教科(バックグラウンド)とする教員は,科学者を目指す子どもや科学好きな子どもを育成するという崇高な目標を持つことが科学の発展や自らのモチベーションの持続に大切です。それには教員自身が科学者であることが必須です。4年次に当研究室に所属した学生の皆さんは,有機化学に関する卒業研究を行って科学者の一員になるための経験を積みます。科学に関する発明や発見が人類の豊かな生活を支えていることや科学することの楽しさを子どもたちに伝えていくことがとても大切です。そのためには高度な科学的知識や研究力を身につけるとともに,研究活動で体得した種々の能力(情報収集分析,課題発掘解決,創造,応用,情報発信など)を学校現場の教材開発や教育実践に活用していくことが必要不可欠です。

(研究の最終盤で) アルキル環内にF原子を導入した双環式環状過酸化物が(FとO が特定の位置関係にある場合に脂溶性が低下することに着目しました),F原子のない母体に比べて非常に高い抗マラリア活性を示すことを発見しました。おかげさまで論文(Tetrahedron Letters Vol.96, 153752, (2022))と特許(2022年5月出願,2025年11月特許査定)という形で研究を締め括ることができました。当該化合物あるいはそれらをヒントにした環状過酸化物が次世代の抗マラリア剤(あるいは抗ガン剤,抗トキソプラズマ剤)として社会貢献してくれることを心から願っております。
 


委員歴

  11

論文

  41

MISC

  24

書籍等出版物

  72

講演・口頭発表等

  180

所属学協会

  5

共同研究・競争的資金等の研究課題

  22

産業財産権

  3

社会貢献活動

  149

メディア報道

  15