症例1は28歳の女性で,右乳腺の肥大,左右乳房の非対称性を主訴に来院し,乳房X線撮影,超音波検査,MRIより術前に右乳腺の7.2×6.8cmのadenolipomaと診断し,腫瘤摘出術を行なった。症例2は43歳の女性で,右乳房外下方D領域の径1.5cmの腫瘤を主訴に来院した。初診時,D領域の腫瘤とともに外上方CE領域に5.2×4.6cmの腫瘤を触知し,超音波ではD領域の腫瘤はcystと診断,CE領域の腫瘤は良性腫瘍であるadenolipomaが疑われ,後者のみ摘出術を行った。乳腺adenolipomaの診断には,腫瘤としての自覚症状に乏しいが,乳房X線検査,MRIが有効である。乳腺adenolipomaは,まれな乳腺良性腫瘍であり,本邦では,これまで自検例を含め13例報告されているにすぎない。