2016年
脂質メディエーターとメタボローム解析によるPPARαノックアウトマウスを用いたコカイン誘発性肝障害の解析
日本毒性学会学術年会
- 巻
- 43
- 号
- 0
- 開始ページ
- P
- 終了ページ
- 90
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.14869/toxpt.43.1.0_P-90
- 出版者・発行元
- 日本毒性学会
【目的】コカインは主としてミトコンドリアのβ酸化能を障害することにより肝障害を誘引することが示唆されており、その毒性の発現には核内受容体Peroxisome Proliferator-Activated Receptor α(PPARα)の関与が指摘されている。そこで、PPARαノックアウト(KO)マウスを用いてコカイン誘因性肝障害を解析した。<br>【実験方法】wildおよびKOマウスにコカイン塩酸塩(30mg/kg)を1日1回腹腔内に投与した。投与期間は1日あるいは3日間とし、最終投与3時間後に肝臓および血清を採取した。対照群にはsalineを投与した。血清ALT、ASTはニットーボーメディカル製BBxを用いて測定した。肝臓の組織切片を作成し、HE染色等により病理像を観察した。さらに、島津製作所製LCMS-8060およびGCMS-TQ8040(何れもタンデム質量分析計)を用いて、肝臓内の脂質メディエーターおよびメタボロームの解析を行った。<br>【結果】血清ALT、ASTは、wildマウスの3日間投与群において対照群に対して有意な上昇が認められた。一方、KOマウスでは、3日間投与群の半数(n=4)で極めて高い値を示したが、残りの半数(n=4)では対照群と同程度であった。HE染色による病理標本においても、wildマウスの3日間投与群では明らかな肝障害が認められたが、KOマウスの3日間投与群では、ALT・ASTが高値を示した個体では、微小脂肪滴の沈着やミトコンドリアの腫大と推定される病変が観察され、特に強い肝障害が認められたが、ALT、ASTが上昇しなかった個体では、このような肝障害は認められなかった。<br>【考察】PPARαは脂肪酸のβ酸化だけでなくNF-κBを基とする抗炎症作用にも関与するため、KOマウスでは強い肝障害が生じるものと予想される。しかし実際には、半数のKOマウスにおいてはコカイン誘因性の肝障害が認められなかった。そこで、KOマウスにおける肝障害の程度の差異について解析するため、アラキドン酸カスケードを主とした脂質メディエーターおよびメタボローム解析を行い、その主因を追及する。
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.14869/toxpt.43.1.0_P-90
- ISSN : 0388-1350
- eISSN : 1880-3989
- 医中誌Web ID : 2017074405
- J-Global ID : 201702245149663385
- CiNii Articles ID : 130005260939