基本情報

所属
金沢星稜大学 人間科学部 教授

研究者番号
30319032
J-GLOBAL ID
200901092648363486
researchmap会員ID
1000281673

外部リンク

研究テーマ:近代日本の学生文化の形成と伝播
 学生文化の形成という教育史・文化史が行ってきた研究を、教育社会学として読みかえていく作業をすすめています。
 具体的には、学歴エリートの代表たる旧制高等学校の学生を中心に、旧制中学・高等女学校の生徒も含めた「学生」を取り巻くさまざまな言説―例えば、教養主義、鍛錬主義、武士道の称揚、純潔、良妻賢母思想など―が、彼らにとってどのような“世界と自己とを意味づけるコード”として受容あるいは反発されてきたのかを、地方メディア(新聞、雑誌の事件報道のみならず、連載小説や読者投稿なども含む)と「学生」側の校友会誌や日誌類を相互に対照させながら分析する作業です。その作業によって、産業社会化への趨勢と階層構造の変動が、「学生」たちの社会的地位の変化や新たな社会階層への転身の問題として、どのように主観的な意味が構成され変容されていったのかを身体や感情・感性の変化というレベルから明らかにしようとしています。

 このような視点は、「学生文化」および彼らの卒業後に形成した社会的ネットワークから、戦前期に形成されつつあった中流階級(新中間層)の構造化と統合性の問題を実証的に解き明かす糸口になると考えられます。日本の戦前期の中流階級研究は、未解明な部分が多いですから。例えば、坪内逍遙の小説『当世書生気質』(1885~1886)に登場する学生たちには、従来のような儒学の教養と結びついた武士的エートスではなく、族籍や出身地域の違いを乗り越え、郷党意識から自由になった新しい学歴エリートの連帯の姿が垣間見られます。そこには、学問やエリート意識を共にすることから生じる絆によって、貢進生世代の気質や地方性は希釈され、「重要な他者(significant other)」が旧藩や同郷集団というよりも、「同輩集団(peer group)」のウェイトが大きい点で、従来とは異なる新しいタイプの学生像が提示されているように思われるのです。


論文

  43

書籍等出版物

  2

担当経験のある科目(授業)

  4

共同研究・競争的資金等の研究課題

  4

学術貢献活動

  6

社会貢献活動

  3

メディア報道

  1