共同研究・競争的資金等の研究課題

2001年 - 2003年

リン生体調節を制御する複合的リン濃度感知システムの解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
13470013
体系的課題番号
JP13470013
配分額
(総額)
14,500,000円
(直接経費)
14,500,000円

無機リン酸は細胞機能や骨格の石灰化に重要である。血中リン濃度はリンの腸管での吸収、細胞内や骨プール間の交換、腎尿細管での再吸収などによって一定のレベルに保たれている。リンは食事中には豊富に含まれ、腸管からは80%以上が吸収される。米国や日本では、食事からのリン摂取量が増加しており、リン摂取を長期間過剰に摂取すると骨障害や加齢を促進することが危惧される。したがって、リン摂取量を制限することはQOLを高く保つために重要と思われる。
生体リンの恒常性を保つためには腎尿細管のリン再吸収能が重要で、リン必要量に応じて再吸収能は著明に増加あるいは減少する。腎尿細管のリン再吸収能を調節する分子として刷子縁膜に発現している2型ナトリウム依存性リン輸送担体(NPT2)が重要で、ホルモンや栄養素で調節を受ける。近年、遺伝性および続発性低リン血症の病態解析から、生体のリン代謝を調節する分子としてPHEXやFGF23が明らかになった。PHEX遺伝子はエンドペプチダーゼをコードしており骨や歯に発現しているが腎臓には見られない。FGF23はエンドペプチダーゼの基質と考えられ腎尿細管でのリン再吸収を阻害する。
細胞膜上に見られるカベオラは構造を示すミクロドメイン(CM)であり、CMに存在するNPT2に副甲状腺ホルモン(PTH)が作用し、NPT2が細胞内へトランスロケーション(エンドサイトーシス)する。CMを阻害するmethyl-3-cyclodextrinやアクチンを脱重合するcytochalasin Dは、PTHによるNPT2のエンドサイトーシスを阻害した。PTHはCMでのPKAやPKCを阻害し、80kDaと250kDaのタンパク質をリン酸化した。我々は80kDaのタンパク質がezrinであることを同定した。以上より、CM上にNPT2は発現し、PTHやアクチンを介したNPT2発現調節にCMが深く関わっていることが明らかになった。本研究を通して、CMは生体内リン代謝を調節するリン濃度感受性システムを構成しているミクロドメインであることが解明された。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-13470013
ID情報
  • 課題番号 : 13470013
  • 体系的課題番号 : JP13470013