論文

2009年3月

「有田磁器の海外輸出とその生産の実像」

亜州古陶瓷学会『亜州古陶瓷研究IV』
  • 高島 裕之

開始ページ
147-156
終了ページ
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)

有田の海外輸出用磁器の実体を理解することは,有田における陶磁器生産の変化を考察するうえで非常に大きなキーワードといえる。有田磁器の欧州への輸出は,それまで運ばれていた中国瓷器が,明代末期の内乱により入手が困難になり,その代替品として求められる形で,17世紀中頃に始まる。本論文では有田磁器の海外輸出についての研究の現状をまとめ,有田におけるヨーロッパ向け製品の生産の様相について,内山地区,南川原地区を例としてまとめた。有田では輸出開始当初から染付芙蓉手皿なども含め、オランダ東インド会社などの特別な注文品にも対応し,南川原地区では輸出する際に,付加価値を加える形で柿右衛門様式の色絵磁器の生産も行なった。17世紀末になり中国瓷器の海外輸出が再び本格化すると,有田では生き残りを図るため、一定の質の製品を大量に作る効率的な生産を目指すようになる。特に「VOC」などの会社銘,王室の紋章など注文主の限定される特別注文品も含め,売れ筋の商品に対応した生産の姿を描き出した。

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