2011年
冷水性淡水魚類生態に適した河川水温環境に関する研究
京都大学防災研究所年報
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- 巻
- 号
- 55
- 開始ページ
- 593
- 終了ページ
- 606
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 京都大学防災研究所
地球温暖化により21世紀末には気温が1.8-4.0℃上昇すると予測されている。河川においては気温の上昇に伴う河川水温上昇が問題視され予測,研究が行われてきた。温度は生物の生息環境を支配する要因の一つである。生物の中でも魚類は温度変化に対して敏感であり,特にサケ科の魚類などの冷水性魚類に対する影響が大きいと考えられている。そこで本研究では今後も従来の冷水性淡水魚類に適した河川水温環境を維持していくための二つの水温管理手法に着目した。まずは発電放流水による管理である。ダム貯水池では夏場は成層化が進み,取水する層の高さによって水温は異なる。通常は,稲作やアユの生育環境の観点から冷水放流が問題となるが,逆に温暖化対策として夏場に適当な冷水が放流されれば河川水温の上昇を抑制することができる。次に,河川地形が河川水温に対して与える効果である。河道内の淵の形成・維持は,水温の低い水塊の保持に効果的であり,さらに河岸からの湧水の流入が冷水環境形成に与える影響は大きい。九頭竜川では冷水性魚類であるサクラマスが生息している。市荒川発電所からは上流のダムから取水された水温の低い発電放流水が合流しており,夏季の本川水温を低下させる効果が期待される。鳴鹿大堰までの流下区間では,日射を受けて再び水温は上昇していく。鳴鹿大堰の湛水区間を経て,その下流の福松大橋地点では右岸側に淵が形成されるとともに,河岸からの湧水流入が確認されており上下流と比べ低い水温環境が形成されている。九頭竜川の水温環境について小型メモリー式水温計(StowAwayTidbitOpticStowAway, 30分間隔, 温度精度±0.2℃)を用いて長期現地観測を行った。さらに,河川の熱収支を考慮した1次元,2次元の水温予測モデルを用いて観測データの再現を行うとともに,条件変化に伴う水温影響予測を行った。さらに,水温が上昇したと仮定した際のサクラマスが生息可能な水温環境を維持するためのダム放流や河川地形管理について考察した。
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- ISSN : 0386-412X
- CiNii Articles ID : 120004945163
- CiNii Books ID : AN00027784
- identifiers.cinii_nr_id : 9000258739979