共同研究・競争的資金等の研究課題

2003年 - 2006年

アンチセンスによる腎移植慢性拒絶反応に対する進行阻止の試み

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
15390498
体系的課題番号
JP15390498
配分額
(総額)
16,600,000円
(直接経費)
16,600,000円

移植腎の長期予後を左右する慢性拒絶反応の成因には、脳死や虚血再灌流障害といったantigen independent factorが慢性拒絶反応に強く関与すると考えられている。本研究の前半は脳死モデルをドナーとする同所性ラット腎移植モデルを作成し、移植前と移植後1時間後におけるグラフト内の遺伝子変化をAgilent社のmicroarrayを用いて解析しその成果を論文にまとめた。ついで動物実験を基盤とし、臨床検体を用いた解析を進めた。臨床検体は献腎移植8例(DCD群)、生体腎移植15例の移植後1時間生検に対し、Agilent【○!R】 Human IA oligo microarray kitを用いて20,173遺伝子について解析を進めた。DCD群とLD群の比較では、DCD群で優位であり(DCD/LD>1.5)かつ2倍以上に発現が亢進している遺伝子は178であった。この中でosteopontin, chemokineやHSPsは著しい変化を示していた。この内容については、成果の一部を短報にまとめた。動物実験の結果をもとに、臨床検体と共通して発現の亢進した遺伝子を選択し、この中から今後診断と治療に応用可能な遺伝子、特に分泌蛋白について検討を加えるべく検索をすすめたところ、有力な候補のひとつとしてNGAL (neutrophil gelatinase-associated lipocalin)が注目された。臨床検体での検討では1時間生検においてreal time PCRでの検討ではDCD群で優位にLD群と比較して発現亢進がみられた。NGALの移植後の血清を用いたELISA解析では、移植前の血清NGAL値は963±33ng/mlであり、生体腎移植例では移植後直ちに減少した。一方腎移植例では術後のNGAL変化は二峰性を示し除々に減少した。後半のピークを過ぎて数日で利尿が始まり移植腎機能は回復しはじめ、献腎移植における血清NGAL値の変化は無尿期における移植腎機能の回復を示すバイオマーカーの一つと考えられた。本研究の成果の一部は現在NGALに関してCell Transplantationに投稿しacceptされた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15390498
ID情報
  • 課題番号 : 15390498
  • 体系的課題番号 : JP15390498