共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2023年3月

個の多様性は社会構造にどう影響するのか?適応的ネットワークによる構成的アプローチ

日本学術振興会  科学研究費助成事業  基盤研究(B)

課題番号
19H04220
体系的課題番号
JP19H04220
配分額
(総額)
12,740,000円
(直接経費)
0円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

情報化・ネットワーク化の進んだ現代社会において,社会ネットワークがどのように動的に変化しているのかを理解し,効果的に運営・管理することは極めて重要な課題である.既存研究ではしばしば社会の構成要素が同質であると仮定され,実社会が持つ個の多様性は積極的に考慮されてこなかった.本研究では「適応的ネットワーク」という独自の枠組みを用い,個の性質に多様性を導入した数理モデルを構築する.モデルのパラメータ値は実社会ネットワーク時系列データの解析から推定する.以上を用いた大規模計算実験により個の多様性と社会構造との関連を明らかにし,従来理論では予言されなかった「多様性と接続性が共存する社会」の可能性を探る.2019年度は,主に適応的社会ネットワークの計算モデルの構築,それを用いた詳細なシミュレーション実験,および実世界における社会ネットワークのデータ収集と整理を行った.シミュレーション実験において用いるパラメータ値は,現段階ではまだ実データから推定するのに十分なデータが確保できていないため,想定されるパラメータ値の範囲を系統的に走査するグリッドサーチ実験として実施した.その結果,個人の行動を規定する3つのパラメータのうち,異質な他者に対する許容度の多様性が,社会ネットワークの構造接続性と状態多様性の双方を同時に促進する効果があること,並びに他の行動パラメータについてはそれらのどちらか一方を促進する効果しかないことが明らかになった.また単純に社会全体で他者への許容度を上げるだけでは,社会の状態多様性は維持できないことも明らかとなった.以上の成果は,NetSci-X 2020 での会議録論文として Springer より出版され,また早稲田大学学内でのシンポジウム・Conference on Complex Systems での口頭発表・ビンガムトン大学でのセミナー・CompleNet 2020 での招待講演として発表された(CompleNet 2020 については COVID-19 の影響により延期となっている).計算モデルの構築およびそれを用いた計算機実験は,当初の予定以上に順調にすすんでいる.パラメータ推定のための実社会ネットワークデータの取得および解析は,研究目的に合致した内容のデータが思いのほか少なく,当初予定よりもやや遅れている.現在,ビンガムトン大学で行われている実験データを活用すること,およびイタリア・FBKの研究者らが収集しているSNSデータの使用許可を得ることを検討・実施中である.偏微分方程式を用いた数理モデルと解析についても今後取り組む予定である.2020年度は,実社会ネットワークデータの収集・解析に主に取り組む.そこから得られた行動パラメータを,2019年度に得られた計算実験結果に照合し,現実の人間社会が相空間の中でどの領域に位置しているのかを明らかにする.また,偏微分方程式を用いた数理モデルの構築も開始する予定である

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19H04220
ID情報
  • 課題番号 : 19H04220
  • 体系的課題番号 : JP19H04220