共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2020年3月

潜在的フラストレーションを利用する開殻π電子系集積体の機能探索

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
17K05783
配分額
(総額)
4,810,000円
(直接経費)
3,700,000円
(間接経費)
1,110,000円

本研究では、電荷をもつ開殻π電子系分子 (ラジカルイオン) の集積状態における潜在的機能を創発することを目的としている。ラジカルイオン種において、不 対電子間の結合性相互作用および対イオンとの静電相互作用により特異な集積構造を形成する。一方でラジカルイオン種間においてはクーロン反発が働いていることから、集積構造には潜在的にフラストレーションが存在する。この潜在的にフラストレーションを絶妙にコントロールすることで、ラジカルイオン集積体の 新しい機能 (流動性ラジカル集積体、刺激による多重応答機能) を追求する。 本年度、フェノチアジンラジカルカチオンとジヒドロフェナジンラジカルイオンを用いたラジカルイオン塩の合成の検討と物性解明を行った。例えば、N-ブチルおよびN-ペンチルフェノチアジンラジカルイオン塩は、深緑色の結晶色から加熱に伴いオレンジ色の流動性物質に変化し、その後冷却することで、一旦オレンジ色の結晶性固体、ついで深緑色の結晶性固体へと変化した。この色変化と同時にオレンジ色では常磁性、深緑色状態では反強磁性的な性質を示すことが分かった。この過程は空気中で繰り返し起こることも明らか になっており、今後の研究発展がさらに見込まれる。アルキル基の種類の詳細を検討することで、今後の分子設計に関する知見を蓄積した。またジヒドロフェナジンラジカルイオン誘導体では、過冷却に伴うヒステリシスが幅広い温度範囲で起こることを明らかにした。

ID情報
  • 課題番号 : 17K05783