2019年4月 - 2022年3月
扁平上皮がんの新規がん遺伝子THG-1の機能解析と分子標的治療への応用
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C) 基盤研究(C)
- 課題番号
- 19K07473
- 体系的課題番号
- JP19K07473
- 担当区分
- 研究代表者
- 配分額
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- (総額)
- 4,420,000円
- (直接経費)
- 3,400,000円
- (間接経費)
- 1,020,000円
- 資金種別
- 競争的資金
正常扁平上皮を構成する細胞は常に更新され、絶妙なバランスで細胞数を維持することで恒常性が保たれている。構成細胞は基底部に存在する幹細胞が非対称分 裂を行うことで供給され、表皮に移動するに伴い増殖を止めて分化する。近年がんの発生には、その組織幹細胞に変異が蓄積することで、がん幹細胞が発生する ことが重要であると考えられている。しかしどのようなメカニズムで、がん幹細胞の発生、がんの発症、及び悪性化へ導かれるかは不明である。申請者はTsc-22 ファミリータンパク質の一つであるTHG-1の機能を解析する過程で、THG-1が皮膚、食道などの重層扁平上皮の基底細胞に発現することを見出した。次に食道がん細胞21種でTHG-1をノックダウンすると、半数以上の細胞で増殖能が低下することを見出した。その際の細胞応答を詳細に検討したとこ ろ、細胞種によっては顕著な細胞老化の形態を示すことが明らかになった。さらにTHG-1を完全にノックアウトした細胞を樹立し、その分子メカニズムについて検討したところ、CDKインヒビターの一つであるCDKN1A(P21)がTHG-1ノックアウト細胞で上昇していることを見出した。CDKN1Aは細胞老化と密接に関わることから、その上流の制御因子について検討を進めたところ、転写因子JUNBが重要であることが明らかになった。実際にJUNBをノックダウンするとCDKN1Aの発現およびSA-beta-gal陽性の老化細胞の出現が抑制されることが明らかになった。以上のことからTHG-1は細胞老化を抑制することで、扁平上皮がんの進展に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
- リンク情報
- ID情報
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- 課題番号 : 19K07473
- 体系的課題番号 : JP19K07473