2005年
The Dainage System of the Bayon Complex, Angkor Thom
日本建築学会計画系論文集
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- 巻
- 593
- 号
- 593
- 開始ページ
- 209
- 終了ページ
- 216
- 記述言語
- 英語
- 掲載種別
- DOI
- 10.3130/aija.70.209_4
- 出版者・発行元
- 日本建築学会
本稿は,アンコール・トムの中心に位置するバイヨン寺院の排水システムに関する研究である。既往研究により,バイヨン寺院内には主に26箇所の排水溝が認められているが,新たに多数の排水溝が確認された。本研究は,バイヨン寺院の建造過程と排水システムの敷設の関連について解明することを目的としている。伽藍全体の排水計画は,増改築が行われた過程でその都度更新され,水はけの悪い箇所が出現すると,新たな排水路を増設していた様子が窺われる。発掘調査では,内回廊の基壇を南北に貴通する横穴と,外回廊基壇を南北に貫通する二本の暗渠が確認された。横穴は内回廊の中庭と,内外回廊間が嵩上げされる以前に,中庭から外側へ雨水を排出するための排水溝であったと推察される。また,暗渠は内外回廊間が嵩上げされる以前に,外回廊の内側から外側へと雨水を排出するための排水溝であったと推察される。建造過程と排水溝の敷設関係については,Dumarcayによるバイヨンの建造過程の考察と,砂岩の帯磁率特性を利用した岩石学的な分析結果に,排水溝の増設過程を突き合わせた結果,Dumarcayの建造過程を支持するものである。排水量は外側へ至るに従って、雨水は次々と合流するため,外側の排水口ほど大きな断面を有するはずであるが,実際は外側のものほど断面が小さくなる傾向を示している。雨量と排水量の計測から,現在雨水の大半は伽藍の基壇に染み込んでいることが確認された。基壇内に浸透した雨水は基壇盛土を伴い外部へと排出されるために基壇の沈下や塔の傾斜の主因となっている。全体の保存修復にあたっては,床面からの雨水の浸透を防ぐと同時に当初の排水溝を活かした適切な排水計画が求められる。
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.3130/aija.70.209_4
- ISSN : 1340-4210
- CiNii Articles ID : 110004849709
- CiNii Books ID : AN10438548