講演・口頭発表等

2020年11月21日

隔離飼育ストレス負荷マウスの対物攻撃行動に基づく加味逍遙散の作用の解析

第73回日本薬理学会西南部会
  • 五十嵐健人
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  • 口岩俊子
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  • 口岩聡
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  • 富田和男
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  • 田中康一
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  • 北中順惠
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  • 北中純一
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  • 西山信好
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  • 竹村基彦
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  • 佐藤友昭

開催年月日
2020年11月21日 - 2020年11月21日
主催者
日本薬理学会
開催地
熊本(オンライン)

[目的]加味逍遙散はイライラに有効とされる漢方薬だが、詳細なメカニズムは不明である。本研究ではマウスの攻撃行動測定装置(ARM)を用いて加味逍遙散の作用を解析した。[方法] ARMではまず2本の金属棒によって5分間足先を刺激してイライラを高め、その後5分間眼前に差し出した金属棒に対する噛みつきの強さと回数を記録している[1]。本研究では3週齢のddY系統マウスを10週齢まで1個体ずつ隔離飼育し、一定の噛みつきの強さ(7 – 15 mNs)を示す個体を用いた。加味逍遙散末(ツムラ, TJ-24, 100mg/kg)は生理食塩水に懸濁して腹腔内注射により投与し、投与前後での噛みつきの強さと回数を比較した。また加味逍遙散の投与30分前に5-HT1A受容体阻害薬であるWAY-100635 (0.5mg/kg)あるいはGABAA受容体阻害薬であるBicuculline (1.0mg/kg)を投与したマウスでも噛みつきの強さと回数を比較した。さらに加味逍遙散投与2時間後に脳組織を摘出し、セロトニン合成に関わるトリプトファンヒドロキシラーゼ(Tph)の定量PCR解析に用いた。[結果]加味逍遙散を投与して2時間後には投与前と比べて噛みつきの強さが雌で約48%、雄で約56%低下し、噛みつきの回数が雌で約48%、雄で約38%低下した(p<0.05)。事前にWAY-100635 (0.5mg/kg)を投与した雌マウスでは加味逍遙散を投与しても有意な低下がみられなかった。加味逍遙散投与後のマウス脳・背側縫線核では生理食塩水投与のマウスと比べてTph1 mRNA量が雌で約1.34倍に、雄では約1.63倍に、それぞれ増加した(p<0.05)。[考察]ARMでは金属棒に対する攻撃行動(対物攻撃行動)を測定している。このような攻撃行動はセロトニン受容体の作動薬であるbuspironeにより抑えられることが報告されている[1]。本研究では、隔離飼育マウスに発症した対物攻撃行動は、加味逍遙散の投与により低減されることが見出された。また、この作用にはセロトニン合成促進の関与が示唆された。
参考文献
[1] Kuchiiwa and Kuchiiwa Journal of Neuroscience Methods 2014.