共同研究・競争的資金等の研究課題

2011年4月 - 2013年3月

覚せい剤メタンフェタミンによる依存状態に対する豊かな環境の影響

兵庫医科大学  教員研究費助成金  

担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

覚せい剤メタンフェタミンは強い精神依存を引き起こし、摂取を止められないばかりか、一旦止めても再発を繰り返す。またこのような規制薬物の使用契機には、環境が大きな影響を与えていると考えられる。私はマウスとマウス用回転皿を用いて、正の要素、豊かな環境におかれた個体、負の要素である単頭飼育された個体、および、群れで飼育された対照の個体を比較検討することにより、依存獲得、維持、消去など依存状態の各過程において、おもに豊かな環境がどのように影響するかを調べる。そして、豊かな環境の影響を、脳内モノアミンの測定を主とした生化学的手法、依存状態の測定を行う場所嗜好性試験を主とし、その他抗不安検定、抗うつ検定を用いた行動学的手法によって、豊かな環境が生体に与える影響を詳細に検討する。また4-phenyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinopline (PTIQ)、ノミフェンシンというメタンフェタミン拮抗薬といわれる側面を持つ、モノアミントランスポーター阻害薬のメタンフェタミン誘発異常行動に対する影響を検討する。私はこれまでに、メタンフェタミンが誘発する、運動量亢進、行動感作などの異常行動に対して、豊かな環境は影響を与えないことを示した。しかし、それらの系で用いるメタンフェタミンの濃度は中等度であり、あくまでも自発的なモチベーションをもって使用する回転皿の影響はマスクされたと考えた。一方で、回転皿がマウス一個体に対して、食餌量や飲水量に影響を与えることなく、日毎に運動量を亢進させることで豊かな環境であることは間違いなく、またこの豊かな環境との比較により、回転皿のないマウスは、レクレーションのような目的で、餌箱に接触していることが明らかとなった。そして、回転皿は餌箱に対する接触よりも強い強化因子であることも示唆された。このように動機づけされた、自発的な行動を引き起こす回転皿を、単回投与では運動量亢進を引き起こさないような低濃度で引き起こされる依存状態を指標として検討を行えば、薬物などと比較してより非強制的な行動を促す一因子として、依存状態に影響を与える新しい可能性として期待できる。またメタンフェタミン拮抗薬といわれる薬物の依存状態に対する影響を見ることで、薬物治療の可能性も探る。