共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2022年3月

適度なアルコール摂取による動脈硬化予防効果の分子メカニズム基盤の確立

日本学術振興会  科学研究費助成事業  基盤研究(C)

課題番号
18K05488
体系的課題番号
JP18K05488
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

1.前年度に引き続き,HepG2細胞のHDL生合成におけるエタノールの影響を検討した。ゲルろ過クロマトグラフィによる解析ではエタノールにより培養上清中のHDL-コレステロールの増加傾向,HDL粒子径の大型化,LDLコレステロールの増加が見られた。これらの変化がどのようなメカニズムによるものなのか,HDL代謝に直接的に関与する蛋白質(ABCA1, HTGL, LCAT,CETPなど)についてウエスタンブロット解析を実施したが,これまでの検討ではエタノールによる明らかな変動は認められなかった。また,コレステロール代謝やLDL代謝の変化が間接的にHDL代謝へ影響を及ぼしている可能性を考え,SREBP2, CYP7A1, MTP, LDLレセプターなどの蛋白発現も分析したが,いずれも一定の傾向をもった結果が得られなかった。
2.今年度は新たに動物実験を開始した。1%エタノールをSDラットに自由摂取させ,10週後に血清および各臓器を採取した。飼料と飲料の摂取量はコントロール群(水飲料)に比べエタノール摂取群で少ない傾向があったが,体重変化には有意差が見られなかった。肝臓組織はエタノールによる脂肪肝の発症は見られず,肝障害のマーカーである血清ALT,AST値もコントロール群と有意差がなく良好な結果であった。血清脂質分析では,エタノール摂取により総コレステロールの減少傾向が見られ,HDL-コレステロールは予想に反して減少傾向であった。血清アポE濃度およびHDL-アポE濃度は低下していた。HDLサブクラス解析では,アポE-rich HDLが減少傾向であった。脂質組成では,HDLの遊離コレステロール比率が減少している傾向が見られた。これらの結果は,アルコール摂取がHDL-コレステロール量だけでなく,クオリティーの変化に関与している可能性を示唆している。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05488
ID情報
  • 課題番号 : 18K05488
  • 体系的課題番号 : JP18K05488