共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

フェミニストNGOが産出する「第三世界」のジェンダー表象

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
19J21075
体系的課題番号
JP19J21075
配分額
(総額)
1,300,000円
(直接経費)
1,300,000円
(間接経費)
0円

本年度は、昨年度までの研究に引き続き、アシッドバイオレンスのサバイバー支援を担うバングラデシュの女性NGOの広報活動を事例として、そこに描かれる人物像をポストコロニアル・フェミニズムの視点から分析した。その際、本年度は、女性NGOがウェブ上に公開する写真集を分析の素材としながら、特に「子ども」像の意味作用に着目した。
分析の結果として見出された知見は以下の通りである。第一に、分析対象とした写真集は、他の開発・人道支援組織の広報物と同じく、無垢な「子ども」像や「母子」像を配置することでオーディエンスの共感を喚起していた。第二に、写真集に登場する「第三世界の男の子」像は、暴力被害による心理的葛藤や社会関係上の困難とは切り離されたかたちで描かれ、女性サバイバーの場合とは異なって安価な生産労働やケア労働を免除されていた。このことはすなわち、「第三世界の子ども」像は一枚岩ではなく、ジェンダーによって差異化されていることを意味している。第三に、そのような「第三世界の男の子」像を介して表出される男性性は、写真集中に登場する「第一世界」の白人男性との関係においては劣位に置かれていた。「第三世界の男の子」像は、グローバルな資本主義の下での男性性のヒエラルキーを崩すことなく、白人男性の覇権を脅かさない位置に置かれているということができる。
今後は、3年間の研究の蓄積を生かしながら、日本国内に流通する開発・人道支援組織(国連機関、政府系機関、NGO等)の広告や出版物を幅広く分析する作業を通じて、「第三世界」のジェンダー表象の実相をより網羅的に描き出していくことが期待される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19J21075
ID情報
  • 課題番号 : 19J21075
  • 体系的課題番号 : JP19J21075